
本間宗究(本間裕)のコラム
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2025.2.17
先進国の国家財政
今回の「金(ゴールド)市場を巡る世界的な混乱」、すなわち、「大量の金(ゴールド)がロンドンからニューヨークに空輸された事態」については、基本的に、「先進諸国の国家財政問題」が根本的な原因だと考えている。別の言葉では、「先進諸国の国家や中央銀行に対する信用の消滅」が発生している状況のことでもあるが、実際には、「税収だけが収入源の国家財政が行き詰まりを見せている可能性」のことである。
より詳しく申し上げると、「国家の財政」を賄う手段としては、「四種類の税金」が存在するものと考えているが、最初は、「1945年から65年までの日本」のように「所得税などの目に見える現在の税金」だけで国家財政が賄われていた状況のことである。しかし、その後の展開としては、「二番目の目に見える将来の税金」、すなわち、「国債の発行」が実施されたものの、「1990年代の日本バブル崩壊」により、「三番目の税金」とも言える「中央銀行が、国民の預金などを使い国債を購入する手段」、すなわち、「リフレーション政策」が実施された状況だったことも見て取れるのである。
そして、このような状況下で実施されたのが、「欧米の銀行を中心としたデリバティブの大膨張」であり、実際には、「世界のメガバンクが、オフバランス(簿外)で資産と負債の残高を大膨張させた状況」のことである。つまり、「大量の金融商品とデジタル通貨」が創り出された結果として、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」が実施されたものの、現在では、「雪だるま式に膨れ上がった世界の不良債権」の存在により、世界全体が、「金融システムの崩壊危機」に見舞われている状況とも理解できるのである。
より具体的には、「政府や中央銀行が発行する国債や中央銀行券」などに対する信用消滅により「国債の買い手」が見つかりにくくなっている状況のことであり、その結果として発生したのが、最近の「金(ゴールド)や銀(シルバー)などの貴金属の奪い合い」、すなわち、「先物などの取引」によるものではなく、「現物の貴金属」を保有しようとする動きのことである。
そのために、今後、政府や中央銀行が取れる手段としては、「四番目の税金」とも言える「中央銀行券の大量増刷」であり、このことは、「1991年のソ連」や「1945年の日本」などと同様に、「国家の債務を、インフレで棒引きにする手段」とも言えるが、今回の注目点は、やはり、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」と同様に、「通貨の堕落と大インフレが、世界全体で同時に発生する可能性」のようにも感じている。
2025.2.18
リフレーション政策とクラウディングアウト
民間部門から資金を吸い上げながら、中央銀行による国債購入を促進する「リフレーション政策」については、当然のことながら、「クラウディングアウト」という「民間金融機関の資金枯渇と金利上昇」を引き起こす結果が導かれるものと考えている。しかも、この過程では、「民間金融機関が保有する債券価格が金利上昇により急落する事態」も引き起こされるために、結果としては、「民間金融機関に大量の不良債権が発生する状況」も想定されるのである。
つまり、現在、「米国のみならず、先進各国の金融機関に、大量の不良債権が存在する」といわれている状況については、基本的に、「1980年代初頭から始まった金利低下」、および、「その推進力となったデリバティブの残高大膨張」が原因の一つとして挙げられるものと考えられるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」から始まった「政府の信用を本位とした通貨制度の存在」を抜きにしては、現在のような「デジタル通貨の残高が大膨張しながら、コンピューターネットワーク内で、さまざまなバブルを造り出していく展開」が考えられなかった可能性である。
ただし、現在では、すでに始まった「世界的な金利上昇」により、ケインズが指摘する「通貨の堕落がもたらす社会秩序を破壊する力」が働き始めた状況のようにも感じられるのである。つまり、「インフレの過程では、経済法則の隠れた力をすべて、社会秩序を破壊する方向に動員でき、しかも、社会の秩序が破壊されていく理由を、百万人に一人も理解できない状況」と言われるような事態が発生しているものと思われるのである。
そのために、今後の注目点としては、「金融界の大量破壊兵器」と言われる「デリバティブ」の破裂時期を考えることとも想定しているが、この点については、「自然界の大地震」などと同様に、「非線形のダイナミクス」を理解する必要性があるものと感じている。つまり、「実際の大地震が発生するまで、それまでに溜まっていた歪みが認識されない状況」が、現在の金融界で発生している可能性のことでもあるが、この点に関して、現在、必要とされることは、「世界的な金利上昇が、今後、どれほどのスピードで先進各国の不良債権を増加させるのか?」を考えることとも思われるのである。
より具体的には、「メガバンクの破綻」などが発生し、「2008年のリーマンショック」が再来する可能性でもあるが、今回の注目点は、やはり、「2008年のようなQE(量的緩和)」ではなく、本格的な「紙幣の大増刷」が始まる展開だと考えている。
2025.2.19
イングランド銀行という名の貸金庫
日本では、現在、「銀行の貸金庫における盗難事件」が多発する状況となっているが、この点を、「世界の金融システム」に当てはめると、「イングランド銀行が保有する金(ゴールド)についても、似たような状況となっているのではないか?」とも感じている。つまり、「他国の政府が、イングランド銀行に預けている金(ゴールド)」などに関して、現在、「現物の金(ゴールド)が、本当に存在するのか?」という疑問が出ているからだが、実際のところ、この点については、以前から、「政府が保有する金が売却されていたり、貸し出されていたりする懸念」が指摘されていた状況だったのである。
より詳しく申し上げると、「金利の付かない金(ゴールド)」については、数十年前から、「売却して債券に交換すべきである」とか「貸し出して金利を稼ぐべきである」というような意見が出ており、その結果として、「いろいろな政府が、この方法を実施していた状況」だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降、世界全体が、「金(ゴールド)よりも、デジタル通貨などを偏重する時代」に入っていたために、最近では、「世界の金融史において、金(ゴールド)が、なぜ、重要視されてきたのか?」が無視されるような状況だったのである。
より具体的には、「イングランド銀行や米国のフォートノックスで保管されている金(ゴールド)」についても、「長い間、監査が実施されていなかった」というような状況とも言われており、この点については、前述の「日本の貸金庫」と同様に、「金庫の中身を、即座にチェックすべき段階」に差し掛かったものと考えられるのである。別の言葉では、「政府や中央銀行への信用(クレジット)」が失われた結果として、本来の「マネー」である「金(ゴールド)」への関心が高まっていることが、現在、「金庫の中身」に関する事件が発生している理由のようにも感じられるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「現代のマネーやクレジット」に関して、「どれほどの残高が存在するのか?」を理解することであり、実際には、「氷のような状態の金(ゴールド)」と「水のような状態の紙幣」、そして、「水蒸気のような状態のデジタル通貨」の現状を認識することである。具体的には、「デジタル通貨が枯渇するとともに、紙幣の大増刷が世界的に実施される可能性が高まっている段階」のことでもあるが、その次の段階として想定される展開は、やはり、「大量の紙幣が、高速回転で、一斉に、現物市場に殺到する状況」、すなわち、私が想定する「80億人の換物運動」が、間もなく、始まる可能性のようにも感じている。