本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.9.30
金融破綻のメカニズム(1)
「世界的な金融システムや通貨制度」については、現在、崩壊の危機を迎えている状況とも思われるが、実際には、「経済学者のケインズ」などが指摘する「100万人に一人も気付かないうちに進行する通貨の堕落とインフレ」が、「1923年のドイツ」の時などと同様に、今回も、「あっという間に発生し、短期間で収束する可能性」である。つまり、「デリバティブのバブル崩壊とCBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」という変化を見た時に、世界中の人々が、こぞって、「換物運動」に走り始める展開が想定されるが、この点に関して、最も難しい問題は、やはり、「いつ、事件が発生するのか?」という「タイミングの判定」とも言えるのである。
そのために、今回は、「1971年のニクソンショックから始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」において、「どのような順番、そして、どのようなメカニズムで、金融面の歪みが蓄積してきたのか?」を検証したいと考えている。別の言葉では、「人々が理解する金融面の大変化」については、「大地震」などと同様に、「ある日、突然に発生する可能性」が高いものと思われるために、現時点で必要なことは、「今までに、どのような歪みが発生してきたのか?」の検証のようにも思われるのである。
具体的には、「金融システムについての部門ごとの分析」であり、実際には、「個人と民間企業」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行と国家」の三部門に関して、「1971年から現在まで、どのような変化が発生したのか?」の研究である。つまり、「マネーの大膨張と収縮」に関して、「どのようなメカニズムが働いたのか?」を考えることであり、また、「どのようなときに、資金繰りのひっ迫が発生したのか?」を理解することである。
別の言葉では、「クレジット」の根本ともいえる「バランスシートの増減」、すなわち、「資産と負債が、どのようなメカニズムで増えたり減ったりしたのか?」を考えることでもあるが、この点に関する重要なポイントは、やはり、「バランスシートの非対称性」であり、実際には、「資産は価格の変動に見舞われるものの、負債は、基本的に価格が一定である」という事実の理解である。
つまり、「バブルの崩壊時」には、「資産価格の急落が、大量の不良債権を発生させた事実」が見て取れるが、より重要なポイントとしては、「大量の負傷債権が、その後、どのようなメカニズムで、民間銀行や中央銀行に移行したのか?」、あるいは、「この時に、国家は、どのような影響を及ぼしたのか?」の理解である。
2024.10.1
金融破綻のメカニズム(2)
「通貨制度の寿命は約50年」という「ケインズの言葉」のとおりに、「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度は、現在、崩壊の危機を迎えている状況」とも思われるが、この点に関して需要なポイントは、「個人と企業」や「民間金融機関」、そして、「中央銀行」や「国家」のバランスシートが、この間に、どのような変化を見せたのかを理解することだと考えている。別の言葉では、「マネーが、どのようにして創られ、また、どのようにして消滅したのか?」を考えることでもあるが、最初の変化としては、「民間企業と個人の部門からバランスシートの膨張が始まった事実」が指摘できるようである。
つまり、「実体経済の成長とともに、民間企業や個人に富が蓄積された状況」のことでもあるが、この点に関して注目すべき事実は、「1980年代から90年代にかけて発生し、崩壊した日本のバブル」だと考えている。具体的には、「1980年代の後半」に発生した「日本の株と土地のバブル」のことだが、実際には、「上がるから買う、買うから上がる」というような熱狂の結果として、「日本の土地を売れば、日本以外の南極までをも含めた全世界の土地が買える」と言われたような状態だったことも見て取れるのである。
より詳しく申し上げると、「約2500兆円」という規模にまで「日本の土地の時価総額」が膨張したわけだが、この時の「バランスシートの変化」としては、「個人と民間企業」、そして、「民間金融機関」のバランスシートが膨張し、その後に、収縮した状況だったことも理解できるのである。つまり、「株式や土地の価格が上昇しているときには、民間金融機関からの借り入れにより、個人と民間企業の資産と負債が膨張するとともに、資産効果により含み益が出た状態」のことである。
しかし、「1990年代のバブル崩壊」がもたらした変化は、「バランスシートの非対称性」が産み出した「マイナスの資産効果」、すなわち、「負債が一定でありながら、資産価格の下落によってもたらされた不良債権」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「資金繰りの悪化」により「大量の企業倒産、そして、不良債権」が発生したわけだが、この時の注目点としては、「民間金融機関に発生した不良債権が、結果として、世界の金融システムを崩壊させる危機にまで行きついた状況」が挙げられるものと考えている。
具体的には、「1997年から1998年にかけての世界的な金融危機」のことだが、この時に取られた政策は、「民間金融機関のバランスシートを簿外で膨張させる政策」、すなわち、「OTCデリバティブの大膨張」だったことも見て取れるのである。
2024.10.2
金融破綻のメカニズム(3)
「西暦2000年前後に起こった変化」として思い出されることは、「想定どおりのITバブル崩壊と金価格上昇」であり、また、「想定外の為替動向」だったが、実際には、「1996年に私自身が考案し、2001年まで有効だった為替理論が、2002年頃から機能不全に陥った状況」のことである。つまり、「二国間の信用乗数比較により、今後の為替を予想する手法」に関して、この前後から、変調が始まり、調査の結果として判明した原因が、「デリバティブの大膨張」だったことが理解できたのである。
より詳しく申し上げると、「信用乗数=マネーストック÷マネタリーベース」の計算式において、「簿外で取引されるデリバティブの大膨張により、正確なマネタリーベースの把握が難しくなった状況」に陥ったことが理解できたのである。しかも、「デリバティブの残高」については、「2000年前後に約1京円」という規模だったものが、その後、「2007年前後に約8京円」という大膨張を見せたことも認識できたのである。
別の言葉では、「民間金融機関のバランスシートが簿外で大膨張し、大量のデジタル通貨が産み出された状況」であり、その結果として、「クレジットの価格を意味する西洋諸国の金利が、未曽有の低水準にまで落ち込んだ状況」のことである。そして、「デリバティブの残高が伸び悩み始めた2007年前後」から発生し始めたのが、いわゆる「GFC(世界的な金融大混乱)」であり、この点については、ほぼ予想通りの出来事だったものの、想定外の事態としては、その後の「金融メルトダウン」が挙げられるのである。
つまり、「GFC」については、「金融界の大地震」であり、その後の「金融のメルトダウン」については、「インフレの大津波が世界を襲い始めた展開」だったものと考えているが、この時の注意点としては、「金融界のブラックホール」とでも呼ぶべき「世界的なコンピューターネットワークの中をデジタル通貨が瞬間的に移行する状態」が挙げられるものと感じている。具体的には、「大津波が海上で大波を発生させる状態」と同様に、「デリバティブの崩壊後に、大量のデジタル通貨が、最初に国債市場、次には不動産市場、そして、その後に株式市場に流れだし、次々と何でもバブルを発生させた展開」のことである。
そして、現在では、「金融界のホーキング放射」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「デジタル通貨が、徐々に、実物資産に流れ始めた段階」に移行し始めたものと想定されるが、この時の問題点としては、やはり、「巨額なデジタル通貨の残高」と「小さな実物資産の総額」に関して「天と地ほどの違い」が存在する状況だと考えている。