本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.10.11
1980年の800ドル
米国株の勢いには、依然として強いものが存在するが、現在、この点に関して述べられ始めた意見の一つに、「1980年の800ドル」、すなわち、「1980年には、ダウ平均も金(ゴールド)の価格も800ドルだった」というものが存在する。つまり、「過去44年間に、ダウ平均と金価格が、どのような歩みを見せたのか?」を分析しながら、背後に存在する「マネーの大膨張」を、より深く理解しようとする試みのことである。
具体的には、現在の「約43000ドルのダウ平均」については、「過去44年間で約53倍の水準にまで上昇した状況」でありながら、一方の「金価格」については、「2000年前後に約250ドルにまで下落し、その後、現在の約2600ドルにまで上昇した展開」だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「マネーの大膨張」に伴い、「株価」や「国債の価格」は上昇したものの、「金価格」については、「1980年から2000年までの約20年間に、価格の暴落が発生した展開」だったことも理解できるのである。
そして、この理由の一つとしては、「水面下で発生したデリバティブの大膨張」が指摘できるものと思われるが、実際には、「本来のマネーである金(ゴールド)の価格を人為的に下げながら、政府や中央銀行などが造り出した預金や債券などのクレジットの価値を高めようとした思惑」が存在した可能性である。つまり、国民が気づかない間は、現在の「信用本位制」と呼ぶべき「政府への信用を本位とした通貨制度」の保全に力を注いできたものと想定されるのである。
しかし、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」をきっかけに発生した変化としては、「金融のメルトダウン」、すなわち、「デリバティブの大膨張で大量に創造されたデジタル通貨が、金融の逆ピラミッド内で、『何でもバブル』、あるいは、『クラックアップブーム』と呼ばれる現象」を引き起こした事実が指摘できるのである。つまり、「いろいろなバブルを発生させながら、徐々に、貨幣の堕落が進展する状況」のことでもあるが、最後には、「何でもバブルの最終章」ともいえる「中央銀行の紙幣増刷により、国民が気づく形でインフレ税が課される事態」が発生するものと考えられるのである。
そして、この時の注目点としては、「世界的な国債や商業用不動産の価格が、すでに急落している状況」であり、この事実が意味することは、間もなく、「株価が下落を始めるとともに金価格が上昇し、再び、1980年時のように、ダウ平均と金(ゴールド)が同じ水準になる状況」を表しているものと考えている。
2024.10.16
グローバル共同体とデジタル通貨
「帝国」および「貨幣」の歴史を辿ると、2010年前後にピークを付けた「グローバル共同体」と「デジタル通貨」については、「人類史上、きわめて稀なケース」だったものと思われるが、その理由としては、「共同体の規模拡大に伴って大膨張したマネー残高」、そして、「情報通信量の劇的な拡大」が指摘できるものと感じている。つまり、「最小限の共同体」とも言える「家族」の場合には、「コミュニケーションの手段」として「会話」が使用されるとともに、「それぞれの思い」を感じることも可能な状況ともいえるのである。
しかし、現在のような「グローバル共同体」、すなわち、「世界各国が、コンピューターネットワークで繋がれるとともに、大量のデジタル通貨が情報となって流れている社会」においては、「0と1の間に存在する無限の情報」が切り捨てられるとともに、「必要な情報だけが、瞬時に伝達される仕組み」が求められているものと思われるのである。別の言葉では、「社会の力」が強くなるとともに「個人の力」が弱くなり、その結果として、「個人の社会への隷従化」が進展した状況のことである。
より詳しく申し上げると、「メガバンクや国家が多額の通貨発行益を手にするとともに、一般大衆には四種類の税金が課される状況」のことでもあるが、この結果として生み出された変化としては、「貧富の格差拡大」が指摘できるものと思われるのである。つまり、「中間層が数多く存在する円の形」ではなく、「少数の富める者と多数の貧しい者が存在する瓢箪の形」に移行する事態のことだが、このような状況下では、当然のことながら、「一般大衆の不満が高まる状態」も想定されるのである。
このように、現在は、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘するとおりに、「1600年前に崩壊した西ローマ帝国」以降、「数多くの小さな共同体」に分裂した世界が、その後、長い時間をかけて、現在の「グローバル共同体」へ統合した状況とも理解できるが、この時に必要とされたものとしては、前述の「世界的なコンピューターネットワーク」と「人類史上初めてのデジタル通貨」が挙げられるものと考えられるのである。
つまり、「本来のマネー」であり「氷のような状態」だった「金(ゴールド)」が、その後、「水のような状態の紙幣」と「水蒸気のような状態のデジタル通貨」を産み出した展開のことだが、これから想定される変化としては、「今までの逆回転」ともいえる「水蒸気のような状態のデジタル通貨」が冷やされるとともに、「水のような状態の紙幣」が地上に大量に降り注がれ、「氷のような状態の金の価格暴騰」だと考えている。
2024.10.17
日銀に残された時間
世界的な投資家、あるいは、金融市場の興味と関心は、今までの「DX革命や生成AI」から、現在の「先進各国の財政事情」へと、急激な転換期を迎えている状況とも思われるが、この点に関して、最も注目すべきポイントは「日銀に残された時間」とも言えるようである。別の言葉では、「金融のメルトダウン」の状況として、今までは、「債券から不動産、そして、株式へ」という順番で世界の資金が流れて来たものが、現在では、「何でもバブルの最終章」が始まり、その結果として、「大量の資金が、貴金属などへの実物資産へ流れ始めた状況」のようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、海外では、以前から、「日本はゾンビ国家ではないか?」というような意見が出るとともに、「GDP比で250%を超えるほどの国家財政赤字を、今後、どのように処理するのか?」に、多くの人々が注目している状況だったのである。別の言葉では、「日本初のハイパーインフレが、世界的に発生する可能性」が危惧される状況だったが、今までの日本では、「世界的な超低金利状態に助けられ、日銀の資金繰りに問題が発生しなかった」という展開だったことも見て取れるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「日銀の財政状態に関する限界点の分析」だと考えているが、実際には、「1ドルが160円」、そして、「短期金利の0.5%」が「日本国家の体力が完全に失われる時ではないか?」と感じている。つまり、現在の「植田日銀総裁」にとっては、「二度の利上げ」がもたらした「一時的な円高状態」により、「時間稼ぎができた」と考えている状況とも思われるが、今後の展開としては、「160円の円安が再来した時に、通貨防衛の利上げが必要とされる事態」も想定されるのである。
より具体的には、「日銀の当座預金に対する利払い費」が「日銀保有の国債から受け取る利息」を上回るのが「0.5%の短期金利」とも想定されるために、今までは、「あらゆる手段を講じながら、時間稼ぎと問題の先送りに腐心してきた状況」とも思われるのである。つまり、「日銀が債務超過の状態に陥る危機」を免れるために、今までは、「国民の預金」や「デリバティブ」などを利用しながら、「人類史上、未曽有の超低金利状態を造り出してきた状況」だったことも理解できるのである。
しかし、現在では、「残された時間」が少なくなるとともに、「政治家のばらまき予算」などによる「国家の財政破綻危機」に対して、多くの国民が危機意識を持ち始めた状況、すなわち、「国民の覚醒」が始まった段階のようにも感じられるのである。