本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.11.16

大義なき解散、総選挙

安倍首相が、「衆議院の解散、総選挙」を決断したが、このことは、あまりにも唐突の出来事だった。そして、この裏側には、いろいろな要因が存在するようだが、表面上は、「消費増税の先送り」に対して「国民の信を問う」ということが「今回の目的」とも言われている。つまり、「景気動向の変化により、10%への増税を考慮する」という条項が存在しながら、あえて、「解散、総選挙」に踏み切ったわけだが、本当の狙いは、マスコミの報道のとおりに、「安倍政権の延命」でもあるようだ。

具体的には、「アベノミクス」に対する「国民の信頼感」が強く、また、「安倍内閣の支持率」が高いうちに「選挙」を実施することにより、次の四年間という「時間の確保」を狙ったようだが、問題は、この時に、「国民が、どのような判断をするのか?」ということである。あるいは、今回の選挙で、「与党」が勝利したとしても、その事実を覆すほどの「大事件」が起きる可能性である。

別の言葉では、「アベノミクス」や「異次元の金融緩和」に対する「信頼感」を、根底から揺るがすような大事件が発生する可能性だが、実際に、「日銀のバランスシート」や「日本の信用乗数」は、きわめて危機的な段階に入り始めている。具体的には、「マネタリーベース」という「日銀の出す資金」と「マネーストック」という「市場に出回る資金」との関係において、現在では、この比率が「約3.5倍」にまで低下しているのである。

つまり、「1990年前後」の「約13倍」から、徐々に、低下を始めており、最近では、急速に、この比率が低下しているが、「1991年のソ連」など、「ハイパーインフレ」に見舞われた国々は、最後の段階で、「信用乗数が1倍にまで低下する」という状況でもあった。別の言葉では、「民間銀行の信用創造機能」が完全に麻痺し、結果として、「中央銀行が出す資金」と「市場に出回る資金」が同じ数字になる状態のことだが、このことが、「マネタイゼーション(債務の貨幣化)」が行き着く結果である。

より具体的には、過去100年間に、30ヶ国以上の国々で、「ハイパーインフレ」が発生したと言われているが、どの国でも必ず発生したのが、「信用乗数の低下」であり、また、「紙幣の大増刷」だった。しかも、今回は、「ほとんど全ての先進国で、信用乗数の低下が発生している状況」でもあり、このことは、現在の「金融システム」や「通貨制度」が危機的な状況に陥っていることを意味しているが、残念ながら、現在でも、この点を理解し、警告を発する日本人は、ほとんど存在しないようである。