本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.6.5

世界的なボトルネック・インフレ

6月3日の「日経新聞」に、「物流渋滞によるインフレの加速懸念」を危惧する記事が掲載されたが、この点には、より大きな秘密が隠されているものと感じている。つまり、「ペントアップ・デマンド(繰り越し需要)」が、その後、「劇場の火事」のような「ボトルネック・インフレ」を引き起こすメカニズムに関して、今回の「コロナ・ショック」は、単なるきっかけにすぎず、その背後には、「デジタル通貨とリアル通貨」、そして、「デジタル商品とリアル商品」という、より巨大な「秘密の仕組み」が働いている可能性である。

より具体的には、「需要(デマンド)」が発生する必要条件として、「マネー(お金)の存在」と「人々の興味と関心」が指摘できることになるが、現在の状況としては、「史上最大規模のデジタル通貨」が「小さな規模のリアル商品」へ向かい始めた状況とも考えられるのである。つまり、「1990年代後半」から始まった「デリバティブの大膨張」により、「2008年前後」までは、「大量のデリバティブ(デジタル商品)」と同時に「大量のデジタル通貨」が造り出された状況だったのである。

そして、その後は、「QE(量的緩和)」という「民間資金を借りて国債を買い付け、超低金利状態を作り出す政策」が取られたわけだが、現在では、「日米欧の中央銀行」において、「資金的なひっ迫状態」が発生しているものと考えられるのである。つまり、「米国のリバースレポや社債の売却」からも明らかなように、「現在の米国では、国債の買い付け資金を、どのようにして調達するのか?」という大問題が発生している可能性のことである。

そのために、これから予想される展開としては、史上最大規模の「デマンド・プル(需要の増加)が引き起こすインフレ」と「コスト・プッシュ(費用の増加)が引き起こすインフレ」が重なり合う状況が考えられるのである。つまり、「大量の紙幣増刷」という「リアル通貨の大膨張」が「デマンド・プルのインフレ」を引き起こすものの、一方で、「リアル商品の物流」については、今回の「コロナ・ショック」からも明らかなように、「時間的な遅れの問題」が存在することも理解できるのである。

別の言葉では、過去20年あまりの「金融界のブラックホール」の内部では、「デジタル通貨とデジタル商品との間で、瞬間的な取引と決済が可能な状況」だったが、今後は、「リアル商品とリアル通貨との間で、費用と時間がかかる取引や決済が主流になる状況」も想定されるわけであり、このことが、「金融界」のみならず「実体経済」における「白血病」を意味しているものと感じている。