本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.5.10

金融メルトダウンの現状

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」や「中国のゼロコロナ政策」などにより、現在、世界の金融市場は、大混乱の状態となっているが、現時点での市場の認識は、「スタグフレーション」という「景気低迷下のインフレ」が主流となっているようにも感じている。別の言葉では、「実体経済の動向」だけが注目され、いまだに、「マネー経済の実情」が理解されないために、今後の展開が予測不能な状況のようにも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「1980年代の初頭から始まったデリバティブのバブル」や「2000年前後から始まった世界的な超低金利状態」に関する正確な分析が欠如しているために、いまだに、古典的な経済理論が横行している状況とも言えるのである。別の言葉では、「1971年から始まった信用本位制と呼ぶべき通貨制度」や「1980年代から急成長を始めた金融商品」に対する理解ができないために、「実体経済の成長が最も大切である」というような「時代錯誤の考え方」に固執している状況のことである。

また、「経済の成長」が意味することは、「新たな商品の産出」と、それに伴う「マネー残高の増加」でもあるが、過去数十年間に発生した変化は、「世界的なコンピューターネットワークの発展」に伴う「デジタル通貨の大膨張」だったことも見て取れるのである。このように、現在は、詳細、かつ、正確な「マネー理論」を抜きにしては、現状説明が不可能な状況でありながら、ほとんどの人々は、いまだに、「DX革命の亡霊」に囚われ、「金融メルトダウンが、実物資産にまで行きついた状況」に気が付いていないのである。

そのために、現時点で必要なことは、「金融の逆ピラミッドにおいて、金融メルトダウンが、どこまで進展したのか?」、あるいは、「世界的な金融混乱下で、世界各国の中央銀行が、今後、どのような手段を講じるのか?」を理解することである。つまり、「中央銀行のバランスシート残高を減らすのか、それとも、増やすのか?」ということでもあるが、実際には、「最後の手段である紙幣の大増刷を、いつ、実施するのか?」という一点に絞られた状況とも考えられるのである。

そして、このキッカケとなるのが、「金利デリバティブのバブル崩壊」、すなわち、「国債の買い手が消滅する事態」だと考えているが、今後の「先進各国の金融政策」については、現在の「プーチン大統領」のように、「なりふり構わず、どのような手段でも講じる展開」が想定されるとともに、今後の「世界的な大インフレ」については、人類史上、未曽有の規模になるものと感じている。