本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.8.22

信用本位制におけるインフレ税

最近、「インフレ税に関する記事」が出始めているが、この点には、大きな注意が必要であり、決して、短絡的な議論や結論に惑わされない態度が必要だと感じている。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「現代の通貨制度」、すなわち、私が提唱する「信用本位制」においては、従来の「インフレ税」の理論が、単純に応用できない状況が想定されるからである。

そのために、現時点において必要なことは、「1945年から現在までの状況を、具体的な数字で検証し、金融システムに、どのような変化が発生したのかを理解すること」だと考えている。具体的には、「1945年からの約20年間」において、「戦時国債で損失を被った人々が、決して、国債に投資しない態度」を貫いたものの、その後、「経済成長や福祉国家の概念に慣れ始めた人々が、歳入を上回る歳出を容認し、将来の税金である国債の発行が始まった状況」のことである。

また、その後は、従来の金融システムと同様に、国債の残高膨張が発生したものの、今回の相違点は、やはり、「1990年代後半から大膨張を始めたデリバティブの存在」とも言えるようである。つまり、「コンピューターネットワークの発展」と「デジタル通貨の大膨張」により、「デリバティブという金融商品が大量に創造され、その結果として、デジタル通貨の大膨張に繋がった状況」のことである。

より詳しく申し上げると、「インフレ税の発生要因」としては、「シニョリッジ(通貨発行益)」の存在が指摘できるが、過去の歴史を見ると、「国民がインフレ税に気付くのは、大量の紙幣が紙切れ状態になった段階」とも理解できるのである。つまり、現在は、「一部のメガバンクが創り出したデリバティブ」の存在により、「国民の資産がメガバンクに移行し、その結果として、紙幣の大量発行が先送りされている状態」とも想定されるのである。

そして、今後は、「デリバティブのバブル崩壊」とともに、「メガバンクの大規模な不良債権」が発生し、その損失を埋めるために、「国家が大量の紙幣増刷を行う展開」が想定されるのである。つまり、「目に見えない税金」である「インフレ税」については、「紙幣の発行権を握っている国家や日銀」が、大きな役割を果たすことが、過去の歴史から判断できるものの、今回は、この点に関して、大きな遠回りの状況、すなわち、「山高ければ谷深し」という諺のとおりに、「巨大なデジタル通貨の山が形成されたために、先送りされた紙幣増刷が、今後、未曽有の規模になる状況」が想定されるものと感じている。