本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.11.29

日銀保有国債の含み損

11月28日に発表された「日銀の上半期決算」では、「日銀が保有する国債の時価評価額が、2013年の異次元金融緩和導入後、初めて含み損に転じた」と報道されているが、このことは、「金融機関が避けるべき手法」である「短期借り、長期貸し」の問題点が表面化した状況を表わしているものと考えている。別の言葉では、今まで、「歴史的な超低金利状態」により隠されていた「金融界のブラックホール」の一部が露呈したものと思われるが、今後の注意点としては、「日銀のバランスシート」に関して、「資産項目と負債項目との両方から苦境に陥る可能性」が挙げられるようである。

つまり、「約500兆円もの当座預金を借りて、約530兆円もの国債に投資した状況」については、「短期金利が急騰しても、国債投資からの金利収入が増えない状況」となっているために、「今後の金利急騰局面」に際しては、「国債価格の暴落が引き起こす含み損」だけではなく、「短期資金の調達に伴う金利負担」が危惧される状況となっているのである。具体的には、仮に、「1%の金利」を「当座預金」に支払うとすると、それだけで、「約5兆円」が必要とされるために、結果として、「日銀の損益が、一挙に赤字に転落する可能性」も指摘できるのである。

このように、「過去20年あまりの超低金利状態」に関しては、「異次元の金融緩和」という「歴史的な金融政策の誤り」が、非難されるのではなく、賞賛されていた状況でもあった。つまり、「金融界のブラックホールに、すべての問題点が飲み込まれていた状態」だったものと思われるが、現在では、「世界的な金利上昇」により、「金融界のホーキング放射」とも呼ぶべき、「問題の露呈化」が始まった状況のようにも思われるのである。

そのために、これから必要とされるものは、「金融政策のハト派とタカ派」というような「曖昧な議論」ではなく、「何が問題点なのかを、具体的な数字で突き詰める態度」のようにも感じている。つまり、「目に見えない金融ツインタワーがそびえたっている状況」であり、また、「実体経済に比較して、きわめて巨大なマネー経済が存在する事実」を、正確に理解することである。

そして、今後は、この点が理解されるまで、「インフレの大津波」が、世界を襲う展開を想定しているが、具体的には、現在の約「1:10」という「実体経済とマネー経済の比率」に関して、今後、「1:1」にまで変化する状況のことであり、実際には、「100:100」、あるいは、それ以上の大膨張が、両方の分野で発生するものと考えている。