本間宗究(本間裕)のコラム
* 直近のコラムは、こちら。
2023.1.15
日本国家の国際的な地位
自民党の麻生副総裁によると、「頼りないと言われた岸田首相のもとで、現在、日本の地位が高まりつつある状況」と述べられているが、この点には、大きな注意が必要なものと感じている。つまり、「国家の地位」を測るバロメーターとして、現在の世界では、「軍事力」や「資金力」が想定されているようだが、今回の「岸田首相の海外歴訪」で見えてきたことは、「日本の軍事力増強と資金的なひっ迫」だったようにも感じられるのである。
より詳しく申し上げると、「西暦1200年から2000年前後の西洋の時代」では、「1600年前に崩壊した西ローマ帝国」と同様に、「軍事力と資金力で、他国を圧倒する状況」が、世界的に求められてきたものと思われるのである。つまり、「帝国主義的な政策により、他国を植民地化する状況」のことだが、この点については、「明治維新以降の日本」に象徴されるように、「軍事面の膨張の後に、資金面での膨張が発生した展開」だったようにも感じている。
別の言葉では、「唯物論的な価値観」が支配する西洋的な時代においては、「シュペングラー」が指摘するとおりに、「最後の200年間に、貨幣が支配する時代が訪れる状況」が発生する可能性のことである。つまり、「実体経済の成長が、その後、マネーの大膨張を生み出す状況」のことでもあるが、この時に発生するのは、「社会の巨大化に伴い、個人の相対的な力が弱くなるとともに、無力感を覚える状況」とも理解できるのである。
そして、このような「800年毎の東西文明の交代」により、「人類が、絶えざる進化と創造を経験する展開」を想定しているが、この時の問題点は、「変化への対応」が難しい状況だと感じている。つまり、「進化のメカニズム」としては、「ダーウィンの自然淘汰説」よりも「突然変異説」が認証され始めていながらも、実際の状況としては、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」のように、「急激、かつ、突然の社会情勢の変化」に対しては、大きな拒否感、すなわち、「そのような事態が、二度と発生するはずがない」というような認識を持ちがちになる状況のことである。
そのために、今後の動向としては、「大衆が、どのように考え、どのような行動を取るのか?」に、大きな注目をしている状況でもあるが、実際には、「シュペングラー」が指摘するような「大衆の分裂」が発生する事態が想定されるものと感じている。つまり、「国家への信用」が失われることにより、「軍事面での維持力」にも問題が発生し、その結果として、「小さな数多くの共同体が発生する可能性」のことである。