本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.4.15

覚醒を始めたアメリカ国民

3月に発生した「米国の連続的な銀行破たん」をキッカケにして、「金融面におけるアメリカ国民の覚醒」が始まったと言われているが、具体的には、「自分の預金は、本当に安全なのか?」、あるいは、「自分のお金は、どの商品に投資すべきなのか?」などを考えながら、「金や銀のコイン」に対する需要が増加している状況のことである。別の言葉では、「お金とは、いったい、何だろう?」という疑問を、多くの人が持ち始めた状況のようにも感じられるが、この点については、私自身も、「1987年のブラックマンデー」の時に、同様の感情を、強く抱いたことを記憶している。

そして、その時から、「お金の歴史」を調べるとともに、「お金の謎」を考え始めたことも思い出されるが、このことは、「日本橋」から「中尊寺の金堂」へ向かい、「奥の細道を歩き始めたような状況」だったようにも感じている。つまり、私自身は、「お金の謎」を考え始めたものの、一方で、ほとんどの人々は、「日本橋」から「金閣寺」へ向かい、「東海道を歩き始めたような状況」、すなわち、「どのようにしてお金を儲けるのか?」という一点に、興味と関心が向かったことも見て取れるのである。

より具体的には、「カール・ポランニー」が指摘する「悪魔の引き臼」などに惑わされることにより、「お金儲けのためなら、どのようなことでも行う人々」が増えた展開であり、この結果として発生した現象が、「人類史上、未曽有の規模でのマネー大膨張」だったのである。つまり、「日本のバブル崩壊」以降、「大量の不良債権が発生し、日本のみならず、世界的な金融システムが崩壊寸前の状況」だった時に、米国の金融機関を中心にして、「デリバティブのバブル」が発生した展開のことである。

そして、この点については、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」に象徴されている状況ではあるものの、現在では、「2022年11月9日のFTX破たん」、そして、「2023年3月のシリコンバレー銀行の破たん」などをキッカケにして、「世界的な金融システムの崩壊」が本格的に始まったものと考えられるのである。

その結果として、最近では、多くのアメリカ国民が、37年前の私と同様に、「お金の歴史を調べることにより、お金の謎の解明に向かった状況」のようにも思われるが、現状は、まだ、「お金の根本が信用である」という点を理解した段階にすぎず、そのために、今後は、更なる金融混乱とともに、より深い理解へと進展するものと考えている。