本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.5.14
基軸通貨国の恩恵
現在、海外では、「世界的なドル離れ」が話題になるとともに、「米国が、今まで、基軸通貨国としての恩恵を、どれほど受けてきたのか?」に注目が集まっているが、この点には、大きな違和感を覚えている。つまり、今から30年ほど前の「1990年代」に、「米国における双子や三つ子の赤字」が議論されるとともに、「シティバンクなどのメガバンクが、倒産の危機に追い詰められていた状況」だったからである。
別の言葉では、「基軸通貨国であるはずの米国」が、世界的な信用を失った結果として、「ドル安」のみならず、「金融システム不安」にも見舞われていたのだが、その窮状を救ったのが、「デリバティブの大膨張」だったのである。具体的には、「2000年前後に約8000兆円の規模」だったものが、その後、「2008年前後に約8京円」という「10倍程度の規模」にまで大膨張した展開のことである。
より詳しく申し上げると、「メガバンクを中心にして、オフバランス(簿外)で、OTCデリバティブを大膨張させることにより、大量の金融商品とデジタル通貨を産み出した状況」のことでもあるが、この結果として発生したのが、いわゆる「DX革命」や「GAFAMなどの巨大企業の成長」だったことも見て取れるのである。つまり、「米国の復活」が、「デリバティブの急拡大」によってもたらされたわけだが、不思議な点は、現在でも、この点が指摘されず、また、「デリバティブ」そのものが隠蔽されている状況のようにも感じられる事態である。
このように、「基軸通貨国の恩恵」として考えられる点は、「デリバティブの大膨張」が実現可能だった事実であり、決して、「ドル高」や「低金利」などが無条件で達成可能な状況とは言えないようにも感じている。別の言葉では、現在の中国が、次の基軸通貨国を目指そうとも、「軍事的、あるいは、経済的な強さ」などが欠如することにより、決して、実現可能な状況とは思われないのである。
より具体的には、「1600年前の西ローマ帝国」、あるいは、「現在の米国や100年ほど前のイギリス」などのように、「パックスロマーナ」、あるいは、「パックスブリタニア」や「パックスアメリカーナ」などと呼ばれるような時代は、「西洋文明の末期に、巨額の貨幣が積み上げられたことが、必要不可欠の要因として指摘できる状況」とも言えるとともに、今後は、「大都市における貨幣と知性の時代」の終焉であり、また、「東洋の唯心的な文明」が始まる展開が想定される状況のようにも感じている。