本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.5.27

人間の欲望

女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、「乳房切除」の手術を受けたそうだが、驚いたことは、「将来の癌発症に対しての予防手術だった」ということである。つまり、「現在は、健康に問題が無いのにもかかわらず、将来の発症率に危機感を抱いた」という状況だったようだが、この時に考えさせられたのが、「人間の欲望」のことだった。つまり、今回の行為は、「東洋で、古来、権力者が不老不死を願い、いろいろな行動を取った」ということと、よく似た行動だったのではないかということである。

つまり、「富」や「権力」、あるいは、「名声」を得た人々が、「次に何を望むのか?」という点において、アンジョリーナ・ジョリーさんは、「無病息災」や「長寿」という「病気をせずに長生きをする人生」を望んだようだが、このことは、「目に見える価値観」を重視する現代人が、「お金」と同等に望むものとも言えるのである。そして、この時に感じたことは、「人間の欲望には限りが無い」ということであり、また、歴史的変化から言えることは、「次に望むものが、死後の世界における安住ではないか?」ということだった。

具体的には、「京都」や「奈良」において、数多くの神社仏閣が存在する理由は、時の権力者たちが、「死後の世界において、地獄に落ちることなく、天国で安住したい」という思いが存在したからである。あるいは、西洋の「免罪符」のように、「お金を払えば、現生での罪を免除される」という考え方は、その背後に、「死後の世界に、罪を持っていかない」という思いが存在したようにも思われるのである。

このように、現在、西洋人が望み始めたことは、「目に見える価値観」よりも、「目に見えない価値観」であり、実際には、「お金」や「地位」よりも、「心の安住」のようにも感じられるのである。つまり、過去数百年にわたり、「時は金なり」という思想に支配され、「お金さえあれば、人生は安泰だ」と考えてきた人々の意識が変化し、現在では、「不老長寿」や「死後の安住」を求めた可能性が存在するのである。

つまり、今から1600年前に、「西ローマ帝国が、あっという間に滅び、その後は、神とともに生きた」という理由が、どうしても理解できなかったのだが、実際には、「人々の欲望」という「心から望むもの」が、大きく変化したことに、根本的な原因があったようである。そして、現在では、ほとんど同じ変化が起き始めている可能性があるようだが、この時に、現代人が信用している「お金」の価値が激減すると、この動きに、より一層、拍車がかかる可能性もあるようだ。