本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.6.7

短期借りと長期貸し

現在、先進国では「超低金利の状態」が当然の事として考えられているようだが、これから想定される「出口戦略」や「量的緩和の縮小」の時に憂慮すべき点は、「短期借り」と「長期貸し」の問題点だと考えている。具体的には、バランスシートにおける「資金調達」と「投資」との関係のことだが、多くの場合において、「資金面の行き詰り」の要因となるのが、「短期資金を調達して、長期の投資に固定する」ということだからである。

例えば、「0.1%の資金を3ヶ月間調達して、0.8%の10年国債に投資する」という運用を考えると、現時点では、「0.7%の利ザヤ」が存在するわけであり、今までのように、「歴史的な超低金利状態」が継続していた時には、たいへん有効な運用方法でもあったのである。しかし、これから想定される「金利の上昇期」においては、「調達金利の上昇」が、当然の事として発生するわけであり、具体的には、「3ヶ月金利が1%にまで上昇する」という変化が起きた時には、「0.2%の逆ザヤ」になってしまうのである。

つまり、「10年国債に投資する」ということは、「ある一定の金利で、資金を10年間、国に貸し出す」ということを意味しており、実際には、「資金の固定化」という状態になってしまうのである。そのために、「短期で資金を調達して、長期投資に固定する」ということは、極力避けるべきこととも言えるのだが、現在のように、「歴史的な超低金利が、長い期間持続した」という状況下では、「いろいろな投資家が、このような状況になっている」ということが考えられるようである。

別の言葉では、「金利の上昇は有り得ないことだ」という考えが広まった結果として、「金利の上昇」に対して、きわめて敏感な社会が形成されたものと考えているが、このことが、現在の「量的緩和の縮小」がもたらすリスクとも言えるのである。特に、現在の日本のように、「10年国債の金利が0.8%前後に位置している」というように、「歴史上、どの国も経験したことが無いほどの超低金利状態」に慣れきった国民にとっては、これからの変化は、衝撃的なものになる可能性があるようだ。

ところが、一方で、「失われた20年間」を乗り切ってきた民間企業においては、「実質上、無借金の会社が、全上場企業の半数にも達する」というほどに、会社内容が改善しているのだが、これからの注目点は、「国家の財政危機」を象徴する「国債」と「民間企業」を代表する「株式」との、「どちらが安心して保有できる資産なのか?」に関する国民の判断でもあるようだ。