本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2013.12.24

量的緩和の縮小

12月19日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」において、「FRB」は、正式に「量的緩和の縮小(テーパリング)」を決定したが、この時に起きたことは、事前の市場予想とは違った「大幅な株高」だった。つまり、多くの人が考えていたことは、「テーパリングの開始により、市場に流れる資金が減少する」、そして、「景気が悪化し、株価が下落する」ということだったが、このことは、あまりにも、短絡的な意見であり、「お金の性質」が、ほとんど理解されていない「大本営的な意見」とも言えたのである。

つまり、「量的緩和」が意味することは、「国債の買い支え」であり、また、この資金は「中央銀行のバランスシート」を大膨張させることにより賄われていたのである。そのために、「量的緩和の縮小」が意味することは、「国債の買い支え」に関して「買い付け金額が減少する」ということであり、本来は、「株価」とは関係の無い事とも言えるのである。別の言葉では、「国債価格の下落」を防ぐための「時間稼ぎ」として、「景気悪化による株価の下落」がコメントされていたようだが、今後は、この点については、より一層、本質が明らかになるものと考えている。

また、「なぜ、テーパリングの開始により、株価が急騰したのか?」という点については、典型的な「プログラム売買」が指摘できるようだが、実際には、「国債の売り」と「株式の買い」が起きたようである。そして、今後は、この動きが、加速していくものと考えているが、問題は、やはり、「国債価格の暴落」であり、実際には、「日米欧の国々が、デフォルトに陥る可能性」も存在するのである。

具体的には、数年前の「ギリシャ」のように、「先進諸国でも、金利が急騰する可能性がある」ということだが、この点を「日本の国家財政」で考えると、「1000兆円の国家債務」に関して、「5%の金利上昇」は、将来的に、「50兆円の歳出増」に繋がる可能性が存在するのである。つまり、「税収のほとんどが、金利の支払いに充てられる」という状況のことであり、このことは、「高利貸しに悩まされる個人投資家」のような状態とも言えるようである。

このように、今回の「テーパリング」については、実質的な「政府の敗北宣言」とも言えるようである。つまり、「問題の先送り」が不可能になり、今後は、本格的な「インフレ政策」が実施される状況のことだが、この時に起きることは、「世界の資金が、一挙に、実物資産に殺到する状況」とも考えられるようである。