本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.6.5

バーナンキ前FRB議長の講演

「5月24日」に、「日銀」の招きで「バーナンキ前FRB議長」が講演を行ったが、内容としては、「ホンネが8割、タテマエが2割」の状況だったようにも感じている。具体的には、「過去20年以上も、日銀が始めた金融政策における革新と実験とに、大きな刺激を受けた」という文章から始まり、「学者としての議論と、FRB議長としての実践には、大きな違いが存在した」とも述べられているのである。

より具体的には、「学者の時には、日銀の金融政策に対して、熾烈な批判をしたものの、その後、実際の金融政策に携わった時には、過去の自分に対して後悔の念を抱いた」ともコメントされているが、実際には、「金利の下限に近付いた状況下で、どのような金融政策を取るべきか?」という点において、「既存の理論」では、ほとんど現実に対応できなかった状況でもあったようだ。

また、この講演において、最も注目すべき点は、「日銀の金融政策」、そして、「日本の財政政策」について、「限界点に達した可能性」を示唆したことだと考えている。具体的には、「日銀のテーパリング(国債買い付け金額の減少)」や「日本の国家財政問題」などを指摘しながら、「日銀の独立性」が失われた時には、「コントロール不能なインフレ」の発生までをも危惧されているのである。

そして、結論としては、「金融政策と財政政策の融合」というような「曖昧な意見」が述べられているが、この時に、「2%のインフレターゲットが達成できなければ、再び、デフレとの戦いが始まる可能性」も指摘されているのである。つまり、「今までの金融政策により、2%のインフレは達成可能である」という考えを持ちながらも、「かりに、インフレターゲットが達成されない場合には、大恐慌が発生する可能性も存在する」と想定しているようだが、この点については、「20年ほど前の議論」とも言えるようである。

つまり、「大インフレか、それとも、大恐慌か?」という選択のことだが、このことは、「過去10年、あるいは、20年間の推移により、結果は明らかだ」と考えている。そして、その理由としては、今まで、世界中の金融当局者が、「1929年の大恐慌」の再来を恐れ、未曽有の規模で「リフレーション(通貨の膨張)政策」を行ったために、これから予想される事態は、この反動とも想定されるからである。別の言葉では、「通貨」や「政府」に対する「信用の失墜」により、今後は、「未曽有の規模での大インフレ」が発生するものと考えている。