本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.5.9
金利と金価格
現在、海外においても、「金利の上昇期には、金(ゴールド)の価格が下落する」というような「的外れの意見」が聞かれる状況となっているが、この理由としては、「インフレを認識させたくない人々が、一種のマスコミ操作を行っている可能性」も指摘できるようである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降、「金や銀の存在」については、「金融システムの蚊帳の外の状態」となっており、実際のところ、「金や銀の価格動向は、金利に対して、ほとんど影響力がない状況」とも言えるのである。
より具体的に申し上げると、「地球に存在すると言われる約17万トンの金(ゴールド)」については、「現在の時価総額が、約1200兆円」というように、「日本の個人が保有する銀行預金」を、若干、上回る金額にすぎない状態とも言えるのである。別の言葉では、現在、世界に存在する「マネー」については、推定で「10京円」を超える金額となっており、しかも、ほとんどが、「デジタル通貨」の形となっていることも見て取れるのである。
別の言葉では、「過去20年余り、世界的な超低金利状態の蓋に覆われて、目に見えないデジタル通貨が、仮想現実の世界で大きな役割を果たしてきた」という状況だったが、現在では、「ほとんど全てのデジタル通貨が、国債への投資に使われた結果として、枯渇した状態」とも考えられるのである。つまり、今までは、「デリバティブのバブル崩壊」を隠蔽するために、「国民の預金などを借りて、中央銀行が、国債の大量買い付けを実施してきた」という状況だったが、現在では、「中央銀行そのものが、国債の買い付け資金に不足する状態」となったのである。
より具体的に申し上げると、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が不在となり、「中央銀行が、大量の紙幣増刷を始めようとする段階」のことでもあるが、現在の「世界的な実物資産価格の急騰」については、「この事実に気づいた人々が、一斉に、資産を移動させ始めた展開」も考えられるのである。つまり、過去50年余りの「信用本位制」とでも呼ぶべき通貨制度が崩壊を始めたために、本来の通貨制度である「金本位制」などが、再び、日の目を浴び始めた状況のことである。
ただし、実際の展開としては、やはり、「未曽有の規模の大インフレ」を経たのちに、「デノミ」が実施され、その後に、「1992年の第二ブレトンウッズ会議」で議論された「商品バスケット本位制」というような、「新たな通貨制度」が模索され始めるものと感じている。