本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.6.15

日銀の決算

5月27日に発表された「日銀の決算」を吟味すると、きわめて危機的な状況が浮かび上がってくるが、具体的には、「約600兆円もの資産」を保有しながらも、「約1.3兆円の経常収入」しか得られず、また、「経常収支のほとんどが、長期国債からの金利である」という事態のことである。つまり、大量の資金を集め、かつ、投資しながらも、わずかな利益しか得られていない状況のことだが、より重大な問題点は、「国民の預金などが、民間の金融機関を通じて、国債に投資されている状態」とも考えている。

また、「約400兆円の当座預金」に関しては、昨年、「約1880億円の利息」を払った計算となっているが、今後は、この点に関して、重大な問題が発生するものと感じている。つまり、「短期借り、長期貸し」という、「金融機関にとって、最も避けるべき状態」となっており、今後、「わずかな金利の上昇で、あっという間に、巨額な損失が発生する可能性」が存在するのである。

別の言葉では、「投資した国債からの収益」については、すでに、長期間にわたって固定された状態となっているために、今後の「金利上昇」については、「国債価格の下落」というデメリットが存在するだけで、「より多くの金利が得られるメリット」は、ほとんど存在しない状態とも言えるのである。そのために、今までは、「米国との通貨スワップ」や「政府からの借入金」など、「ありとあらゆる資金を借りいれて、国債を買い増していた状況」でもあったが、現在では、「マイナス金利の売り現先」までもが実施されている状況となっているのである。

つまり、「金利」を払って「短期資金」を借り入れているわけだが、このことは、「借金漬けとなった個人が、高利貸しに頼るような状態」とも考えられるのである。そして、今後、最も注目すべき点は、「金利の上昇(国債価格の下落)」であり、実際には、「金利が払えなくなった日銀が、当座預金を、どのように処理するのか?」ということである。

つまり、「国債を売却して、当座預金の残高を減少させる方法」か、それとも、「金利の付かない紙幣を増刷して、当座預金を民間金融機関に返却する方法」を選択するのかという「二者択一」に迫られる展開のことである。ただし、どちらの場合にも、「危機感を覚えた国民が、慌てて、預金や国債から、株式や貴金属への資金移動を始める状況」になるものと思われるが、皮肉な点は、このことが、以前から、金融庁が勧めていた「リスク資産への資金移動」という事実のようにも感じている。