本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.5.22

ペーパーゴールドの消滅危機

現在、欧州の金融市場で噂されていることは、「ペーパーゴールドの消滅危機」であり、実情としては、「金(ゴールド)の現物を保有していない銀行が、先物で大量のカラ売りしている状況」に関して、今後の数か月間で、「カラ売りのポジションを急激に減少させる可能性」のことである。つまり、「カラ売りの買い戻しにより、貴金属価格が急騰する可能性」が指摘されているが、多くの投資家の感想としては、「今まで、カラ売りに、さんざん悩まされてきた」という状況のために、「なぜ、現在、このような行動をとらざるを得ないのか?」という意見までもが出る状況となっているのである。

そして、この理由としては、「デリバティブ時限爆弾の破裂」とも思われるが、実際には、「アルケゴス・ショック」以降、「欧州金融機関の資金的な余力が失われた状態」となっているために、「小さな市場である金属のデリバティブを縮小させ始める可能性」とも考えられるのである。つまり、いまだに「約6京円」もの残高が存在する「デリバティブ」については、ほとんどが、「金利関連のデリバティブ」であり、今までは、「世界の金融市場をコントロールすることにより、超低金利状態が維持でき、デリバティブの崩壊を防ぐことができた状況」だったのである。

しかし、最近では、「デジタル通貨の枯渇」や「実体経済への資金染み出し」などにより、徐々に、「世界的な金利上昇」、そして、「商品価格の急騰」という変化が発生しているのである。つまり、「金融機関の資金繰り」に関して、いろいろな問題が発生してきたものと思われるが、その結果として、「金融機関の自己資本規制」である「バーゼル3」が注目され始めている状況のようにも思われるのである。

より具体的には、「BIS (国際決済銀行)」を中心にした「世界各国の金融当局者」が目指すことは、「マクロプルーデンス」という「金融システムの安定」でもあったが、具体策としては、「中央銀行が、国民の資金を借りて、超低金利状態を作り出す方法」しか取ってこられなかったのである。別の言葉では、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」しかできない状況だったわけだが、この結果として発生した変化が、前述の「アルケゴス」をキッカケにした「デリバティブ爆弾の連鎖破裂」とも考えられるのである。

そのために、今後の注目点としては、「貴金属の価格が、年末までに、どれほどの急騰を見せるのか?」、また、「世界の金利が、同期間に、どれほどの上昇を見せるのか?」ということだと考えている。