本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.6.13

世界的なインフレ税

6月12日付の日経新聞に掲載された「米国におけるインフレ税の衝撃」に関する記事は、全く納得がいかない内容だった。つまり、「税金の種類」としては、以前から申し上げているように、「見える税金」と「見えない税金」の2種類に大別が可能であり、また、「見える税金」についても、「現在の税金」である「消費税や所得税」、そして、「将来の税金」である「国債の発行」に分けることが可能な状況とも言えるのである。

また、「見えない税金」が、本来、「インフレ税」と呼ばれるものであり、この時にも、「国民が気付く段階」と「気付かない段階」に分類されるのである。具体的には、「量的緩和(QE)」などの「リフレーション政策」、すなわち、「国民の預金などを使い、超低金利状態を作り出した展開」については、「国民の預金を、国民が気付かないうちに、国債などに転換した状況」だったことも見て取れるのである。

そして、現在では、「国民が気付く段階でのインフレ税」が世界的に課され始めたわけだが、このことは、「インフレの大津波が、世界全体を襲い始めた状況」を表しているのである。別の言葉では、従来の手法である「量的緩和」が、「デジタル通貨の枯渇」により 実施不能な状況となったために、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして膨張させるのか?」に関して、新な手法が模索され始めたのである。つまり、従来ならば、「紙幣の増刷」という手法が取られるわけだが、この副作用として発生する現象が「金融面での白血病」のために、現在では、「中銀デジタル通貨の発行」が模索されているのである。

しかし、この点については、現在、「デジタル通貨がリアル商品に流れ始めた状態」、あるいは、「金融界のブラックホールに隠れていたインフレ圧力が、一気に、実体経済にあふれ始めた状態」となっているのである。そして、このことが、「国民が気付き始めたインフレ税」を意味するわけだが、今後の展開としては、「値上がりするものに資金が集中する」という「お金の性質」が発揮される事態が予想されるのである。

つまり、「穀物」や「貴金属」、あるいは、「食肉」や「非鉄」などの「数量が限られた資源」に対して「大量の資金が殺到する展開」のことだが、このような状況下で予想されることは「物価指数の急騰」であり、また、この対抗策として取られる「金利の上昇」である。別の言葉では、古典的な意味での「大インフレの発生」であり、この点を理解することは、今後の数年間を生き延びる上で、必要不可欠の認識とも思われるが、残念ながら、現在でも、ほとんどの日本人は、この事実を認めたくないようにも感じられるのである。