本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.6.30
BISのギブアップ宣言
6月29日に発表された「BIS(国際決済銀行)の年次レポート」では、「1980年代から始まった貧富の格差は、現在、あまりにも巨大なものとなり、すでに、金融政策では修復が不能な状態に陥っている」と述べられている。つまり、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」は、今回、驚いたことに、「金融戦争の敗北宣言」とでも呼ぶべきコメントを発表したのである。
そして、この原因としては、やはり、「デリバティブのバブルと、その後の破裂」が指摘できるものと考えている。しかし、今回の年次レポートでは、残念なことに、この点が触れられておらず、単に、「貧富の格差が、現在、きわめて大きくなっている事実」や「大膨張した国家債務からの出口戦略として、すでに、最後の手段を取らざるを得ない状況」などが述べられているのである。別の言葉では、「中銀デジタル通貨の実現性」に触れてはいるものの、「通貨の歴史」や「通貨の本質」を熟知しているために、「これ以上の時間稼ぎができなくなった事実を暴露した状況」のようにも感じられたのである。
より具体的には、「過去のインフレ」などに言及しながら、「今後、どのような展開が予想されるのか?」について説明を始めているが、「1971年からの50年間で、どれほどの大変化が発生したのか?」を振り返ると、「BISといえども、今後の衝撃に対して、身構えざるを得ない状況」のようにも感じられるのである。つまり、現在の「デジタル通貨」に関して、今後、「ほとんど価値が無くなる状況」、すなわち、「金融敗戦後の大混乱に関して、誰も、想像ができない状態」も想定されるのである。
別の言葉では、「デリバティブのバブル崩壊」、そして、「金利やインフレ率の急騰」という大変化が、間もなく、想定されるわけだが、この点に気付いていない人々は、「第二次世界大戦後の日本人」と同様に、慌てて、「換物運動」、すなわち、「預金を現物に交換し始める動き」を始めるものと思われるのである。つまり、「食料」や「貴金属」などの実物資産に殺到する事態のことだが、残念ながら、現時点では、「オリンピックの後に、どれほどのコロナ患者が発生するのか?」が国民の主な関心事とも言えるようである。
そのために、現時点で必要なことは、「過去1年余りのコロナ・ショック」を忘れ、「それまでに、どのようなことが起こっていたのか?」を思い出すことであり、実際には、「異次元の金融緩和により、国民の資産が、ほとんど、食い潰されていた事実」を、よく振り返ることだと感じている。