本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.6.27
金利上昇のインパクト
6月25日に発表された「3月末の資金循環表」によると「日本国民の個人金融資産は約1946兆円」、そして、「個人の預金増額は約1056兆円」にまで増えているとのことである。つまり、日本人の多くは、依然として、「預金を持っていれば安全だ」と考え、「マイナスの実質金利」が意味する「すでに、預金の実質的な目減りが始まった状況」に気づいていないものと考えられるのである。
そして、今後、「金利が上昇すれば、以前のように、金利が貰える時代が再来する」とも考えているようだが、今回は、「短期金利が1%にまで上昇すると、どのようなことが起こるのか?」について具体的な説明を行ってみたいと考えている。つまり、「誰が金利を払うのか?」ということだが、「1056兆円の預金に対して、1%の金利は10.56兆円に相当する」という事実、あるいは、「民間金融機関、そして、日銀のバランスシートに、どのような変化が発生するのか?」を考えると、「決して、安穏としてはいられない状況」とも思われるのである。
より具体的に申し上げると、「1056兆円の預金」については、「民間の金融機関と日銀が、ほとんど全ての金額を、国債に転換した状況」、すなわち、「国民の預金を借りて、国債を買い付けた状況」とも言えるのである。別の言葉では、「日銀が、当座預金などの名目で短期資金を借りて、国債などの長期投資を行っている状況」、また、「民間銀行も、集まった預金の一部を、国債に投資している状況」となっているのである。
そして、この時の問題点は、「短期金利が1%にまで上昇すると、どのような危機が発生するのか?」ということだが、「日銀の決算発表」から見えることは、「国債投資から得られる利息は約1.1兆円で固定されながら、一方で、当座預金への利払いは、約5兆円にまで増える可能性」である。つまり、「大幅な赤字決算」が予想されるわけだが、この時に、「日銀が、どのようにして、赤字を埋めるのか?」については、基本的に 「日銀券の増刷」であることが、過去の歴史が教えることである。
ただし、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れない」という「金融界の白血病」も予想されるために、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS(国際決済銀行)」は、現在、必死に、「中銀デジタル通貨(CDBC)の正当性」をアピールしようとしているようだが、実際には、「日本人」も「預金への信頼感」を失いつつあり、今後は、戦後の混乱時と同様に、「換物運動」に殺到する可能性も想定されるようである。