本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.8.27
二種類の金融混乱
現在、「世界的な利上げ」が議論される状況となっているが、このことは、人々の興味と関心が「大インフレ的な金融混乱」へ移行した事実を表しているものと考えている。つまり、「金融混乱」には、「大恐慌型の金融混乱」と「大インフレ型の金融混乱」という二種類が存在するわけだが、実際には、「1929年のアメリカ」と「1970年代のスタグフレーション」が、典型的な「大恐慌型の金融混乱」とも言えるのである。
そして、「1923年のドイツ」や「1991年のソ連」が、いわゆる「大インフレ型の金融混乱」であり、両者の違いとしては、「実体経済の崩壊」と「マネー経済の崩壊」が指摘できるものと考えている。つまり、現在、人々が恐れているのは、「株価の暴落」という「大恐慌型の金融混乱」とも言えるが、このことは、「政府の財政や通貨制度が安定している状況下で、実体経済の悪化が金融を混乱に陥れた状況」のことである。
そして、「大インフレ型の金融混乱」は、「政府の債務が返済不能となり、紙幣の大増刷を実施した状況」が根本的な原因であり、この時には、「株価や商品価格の一時的な大暴騰」が発生することも見て取れるのである。つまり、「お金」には、「ストック(残高)であり、インフレ(通貨価値の下落)でしか消滅しない」という性質が存在するが、現在では、「未曽有の規模にまで膨らんだデジタル通貨の発行残高」に限界点が訪れるとともに、間もなく、「大量の高額紙幣発行」が予想される段階となっているのである。
別の言葉では、「株価の暴落」ではなく、「債券価格の暴落(金利の急騰)」を恐れるべきだということが、以前から申し上げてきたことだが、現在では、ようやく、世界的な金利上昇が始まろうとしているのである。そして、この時の注意点としては、「債権価格の急落は、ほぼ瞬時に発生する」という展開でもあるが、この理由としては、「株式と違い、債券は、金利だけを取引する商品である」という事実が指摘できるのである。
しかも、今回は、「1980年代初頭」から始まった「デリバティブの大膨張」と、それに伴う「世界的な金利低下」が大きな注目点であり、このことは、現在の「デジタル革命」と「恩恵を受けた業種」が、大きな転換点に遭遇する可能性を意味しているのである。つまり、今までは、「大量の資金」が存在したものの、今後は、「資金の実質的な枯渇状態」に見舞われるために、「どのような商品が、我々の生活にとって、本当に必要なのか?」が吟味される時代、すなわち、「購買力の不足により、新商品を作っても売れず、商品が、命がけの飛躍を迫られる時代」が到来する可能性のことである。