本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.10.2
追い詰められた米国の債務上限問題
9月30日の米国議会では、「12月3日までのつなぎ予算は署名されたものの、債務上限問題が切り離された」と報道されている。つまり、「10月18日に期限を迎える」と言われている「米国の債務上限」については、いまだに解決されていない状態となっているが、今回は、今までとは違う大問題が隠れているものと感じている。具体的には、「上限を増額しても、国債の買い手が存在しなくなる可能性」のことだが、この問題を判断するポイントは、やはり、「米国FRBのバランスシート」にあるものと考えている。
より詳しく申し上げると、「9月29日現在のバランスシート」から判断できることは、「総額が約8.5兆ドル(約943兆円)」という状況であるものの、「負債項目」に関して、最近、劇的な変化が発生している事態である。つまり、「レバースレポ」という「超短期の負債」が急増している展開のことだが、実際には、現在の残高が「約1.7兆ドル((約188兆円))」というように、「一年前の約0.11兆ドル(約12.2兆円)」と比較すると、信じられないほどの激増状態となっているのである。
そして、この理由としては、「国債の買い手」が激減した点に加えて、「量的緩和(QE)の行き詰まり」が指摘できるものと考えている。別の言葉では、「FRBの資金繰り」に関して、「資金の出し手」がいなくなった状況が想定されるわけだが、実際には、「借金が難しくなった個人が、サラ金に手を出したような状態」とも思われるのである。そして、このような状況下で考えなければいけない点は、「仮に、国債の上限が増額されても、資金繰りの問題は解決しない」という事実である。
別の言葉では、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅した時に、「ほぼ瞬間的に、金利の急騰が発生する」という展開が想定されるわけだが、現時点でも、「ほとんどの人が、この事態を憂慮していない状況」とも言えるようである。つまり、「天災や人災は、人々が忘れた時に発生する」という言葉のように、今回は、「コロナよりも財政破たんが引き起こすインフレの方が気がかりの状態」とも思われるのである。
そして、このことは、「相場の格言」とも言える「人々が恐れる事態は発生せず、予期していなかった事件が発生する」という事態とも合致するものと考えている。つまり、「ソ連崩壊から30年目の2021年」に、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊が、世界的な大インフレを引き起こした」というような展開のことだが、「10月の相場」については、このような認識をもって見守る必要性が存在するものと感じている。