本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.9.29
中央銀行に残された手段
現在、世界的に議論されていることは、「テーパリング(量的緩和の縮小)や利上げの時期」でもあるが、この点に関して注意すべきポイントは、「現在、どれほどの金利負担が発生しているのか?」、あるいは、「金利上昇が、金融システムに対して、どのような影響を及ぼすのか?」だと考えている。つまり、多くの人々が、「20年以上も継続した超低金利や最近のマイナス金利の状態」に慣れ切ったために、「負債残高と金利の相関関係」を忘れ去った可能性があるようにも感じられるのである。
具体的に申し上げると、「マイナス金利の効用」としては、「国家の債務残高に関して、増加スピードの減少」が挙げられるが、一方で、「金融システムの全体像」からは、「民間金融機関が、金利分を負担した構図」も見えてくるのである。別の言葉では、「量的緩和(QE)の実施により、国家の財政問題は、時間的な猶予を得ることが可能だった」という状況だったが、一方では、残高が増えた展開だったことも理解できるのである。
つまり、「超低金利やマイナス金利に慣れ切った現代人は、金利負担の重みや金利を受け取るメリットを忘れたのではないか?」ということだが、実際のところ、「日銀は、短期金利が0.3%に上昇するだけで、赤字に陥る可能性」が存在し、また、「日本の国家は、金利が5%に上昇すると、税収のほとんどが金利負担で消滅する可能性」も考えられるのである。別の言葉では、今後、最も注目すべき点は、「大量に積み上がった負債を、どのようにして処理するのか?」という「きわめて当たり前の問題」とも言えるわけだが、実際には、「MMT(現代貨幣理論)」などの「バブル期に特有の詭弁的な理論の出現」により、ほとんどの人々が煙に巻かれた状況となっているのである。
そのために、今後、最も注目すべき点は、「中央銀行が、どのような手段を講じるのか?」ということであり、実際には、「紙幣の増刷」しか残されていない状況とも思われるが、最近、議論され始めたことは、前述の「金利上昇による出口戦略」、すなわち、「インフレに対応するためには金利を上げるべきだ」という意見とも言えるのである。つまり、このことは、典型的な「三次元の経済学」であり、「過去の推移が全く無視された状況」とも言えるわけだが、残念ながら、現在でも、この点を批判する人が現れない状況となっているのである。
そのために、今後の注目点は、今まで以上に、マスコミの議論に踊らされないことであり、また、未曽有の金融混乱に備えることであり、実際には、「1923年のドイツのハイパーインフレ」を参考にして、今後の展開を予想することである。