本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.7.2

民間の実体経済と政府のマネー経済

現在は、「インフレ」に関する誤った意見が、数多くみられる状況とも思われるが、具体的には、「景気が低迷すれば、インフレ率が収まり、金利も低下する」、あるいは、「スタグフレーションが発生しても、ハイパーンフレには繋がらない」などのコメントである。つまり、「正しい分類や分け方ができていないために、何がなんだか、訳が分からなくなっている状況」のことだが、この点に関して、現在、必要とされることは、「民間の実体経済」と「政府のマネー経済」を、正しく理解することだと感じている。

別の言葉では、「民間企業や個人などの民間部門が税金を払い、その税金を、政府が使っている状況」のことだが、この点に関して、最も重要なポイントは、「歳入と歳出との関係性」であり、実際には、「歳出が歳入を上回ると、国家は国債の発行により、不足分を補う状況」のことである。ただし、この時の問題点は、「国債の買い手が消滅する事態」であり、この点に関して、過去の歴史が教えることは、「中央銀行の紙幣大増刷により、不足分を賄う措置が取られる展開」だったことも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「1970年代のスタグフレーション」の時には、「国債の増発」により、「国家の資金繰り」が賄われたものの、現在では、間もなく、「国債の買い手」が消滅する事態を迎えようとしているのである。別の言葉では、「アベノミクスの正体」とも言える「日銀が、国民の資金を借りて、間接的に国債を購入していた状況」が、いよいよ、限界点に達しようとしている可能性のことである。

そのために、現在、「日本以外の先進諸国」では、急速に、「超低金利状態からの出口戦略」を実施し始めているが、これから予想される問題点は、やはり、「歳入と歳出のギャップ拡大」であり、また、「国債の買い手が消滅する事態」とも考えられるのである。つまり、過去のハイパーインフレのとおりに、「民間部門の停滞による税収の急減」、そして、「金利負担増がもたらす歳出の拡大」という構造により、あっという間に、「ハイパーインフレの発生」へとつながる展開のことである。

しかも、今回は、「1995年前後から急速に拡大したデリバティブのバブル崩壊」も重なっているために、これから予想される「世界的な金融大混乱」については、人類史上、未曽有の規模になるものと考えているが、基本的な認識としては、やはり、「過去20年余りの期間、世界の金融政策を先導してきた日銀が、今回の紙幣大増刷でも先導役を果たす可能性」とも言えるようである。