本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.3.2

量的緩和という名目のリフレーション政策

現在、海外では、 盛んに、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の実施」が議論されているが、この点については、大きな注意を要するとともに、現時点で必要なことは、「リフレーション政策の正しい理解」だと考えている。つまり、「デリバティブの大膨張」に関しては、「民間金融機関のバランスシートにおいて、残高の急激な膨張が発生した状況」であり、このことは、「貨幣(マネー)が創造された展開」だったことも見て取れるのである。

しかし、一方で、「2010年前後から本格化した量的緩和(QE)」に関しては、「中央銀行のバランスシート残高の急増」であり、このことは、「民間部門の資金減少を補う効果」が存在したものと考えられるのである。別の言葉では、「中央銀行が民間金融機関から資金を借りて、国債などの買い付けを実施した状況」は、「中央銀行が、不良債権の引き受け手となった事実」を表しているものと理解できるのである。

そして、現在の金融混乱については、「中央銀行が、どのようにして資金を調達するのか?」が根本的な問題となっており、このことは、「民間金融機関からの借り入れが難しくなった状況」を表しているものと想定されるのである。つまり、これから予想される展開は、過去のパターンのとおりに、「紙幣の大増刷」とも思われるが、この方法に関しては、以前から指摘しているとおりに、「金融界の白血病」とも言える「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない事実」も指摘できるのである。

そのために、現在では、「BIS(国際決済銀行)」を中心にして、「紙幣の代わりにCBDCを発行する案」が模索されているようだが、この方法に関しては、「究極のリフレーション政策」、あるいは、「国民が気付く形でのインフレ税の徴収方法」とも言えるようである。つまり、今までは、「中央銀行のバランスシート膨張」という「国民が気付かない方法で、インフレ税の徴収が実施されていた状況」だったものが、現在では、この方法に限界点が訪れたものと考えられるのである。

別の言葉では、「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行段階に差し掛かった可能性でもあるが、今後の注目点は、「金利やインフレ率の上昇率」だと考えている。つまり、過去の経験則から言えることは、「10%台までが、ギャロッピング・インフレ」であり、その段階を過ぎると、いわゆる「ハイパーインフレ」と言われる、「約6ヶ月間で、信じられないほどの価格上昇に見舞われる展開」が想定されるとともに、この時の推進役が、大量の「紙幣」、あるいは、「CBDC」とも想定されるのである。