本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.7.10
コロナ禍とウクライナ戦争
7月9日付けの日経新聞に掲載された「カルステンスBIS総支配人のコメント」に関しては、「インフレの発生要因」について、きわめて曖昧な説明が行われるとともに、最も重要なポイントである「デリバティブの大膨張」が抜け落ちていた状況だったようにも感じている。つまり、今回の「世界的なインフレ」に関しては、「なぜ、日本で20年以上も、実質的なゼロ金利政策が可能だったのか?」などの点について、より詳しい説明が求められているものと考えられるのである。
別の言葉では、「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の最終局面において、「なぜ、デジタル通貨が、世界的に普及したのか?」を理解することであり、また、この点に関する重要なポイントは、「民間銀行のバランスシートが、オンバランスのみならず、オフバランス(簿外)で大膨張した展開」であると考えている。つまり、「西暦2000年前後から本格的に始まり、2010年前後にピークを付けたデリバティブの大膨張」に関しては、実際のところ、「民間のメガバンクにおける、オフバランスでのバランスシート残高の大膨張」だったことも見て取れるのである。
そして、このことが、「インフレ」や「金利」などに関して、「どのような意味を持っていたのか?」を考えると、実際には、「マネーの大膨張が、金利を引き下げた状況」だったようにも想定されるのである。あるいは、「大膨張したデジタル通貨」が、「インフレ統計に含まれない金融商品」に殺到した結果として、「既存のインフレ指数」に影響が及ばなかった状況のようにも思われるのである。
また、その後の「世界的な量的緩和(QE)」に関しても、実際には、「中央銀行が、民間から資金を借り入れ、国債を買い付けることにより、超低金利状態が演出された状況」だったものと理解できるのである。つまり、「目に見えないインフレ税」が、「リフレーション政策」という「国民の気付かない方法」で課されることにより、「国民の財産が、徐々に、国家に移転した状態」だったようにも思われるのである。
そして、今回の「コロナ禍」と「ウクライナ問題」に関しては、大量に創られた「デジタル通貨」が「統計指数に含まれる商品群」に殺到する「キッカケの事件」となったものの、その結果として実施された「世界各国の中央銀行による急激な利上げ」については、実際のところ、インフレの根本原因である「約330兆ドルの世界債務」と「約600兆ドルのOTCデリバティブ」の解消には、ほとんど役立たない状況とも考えられるのである。