本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.9.18
バランスシート不況の現状
「20世紀の特徴」として挙げられる点は、真っ先に、「中央銀行の設立による世界的なマネーの大膨張」とも思われるが、実際には、「民間企業や個人部門のバランスシート大膨張」から始まり、その後に、「民間金融機関のバランスシート大膨張」、そして、「政府や中央銀行のバランスシート大膨張」へと移行していった展開のことである。つまり、「現在のマネーが、どのような過程を経て、大膨張を達成したのか?」を考えると、実際には、「民間企業や個人の資産と負債の同時的な大膨張」から始まったことも見て取れるのである。
より具体的には、「1913年から1933年までの通貨制度」としては、「金貨本位制」が採用されており、「人々は、20ドル金貨を持って、フォードの自動車などを買いに行った」とも説明されているのである。そして、その後は、「1944年までの金地金本位制」、そして、「1971年までの金為替本位制」へと移行したわけだが、その理由としては、やはり、「実体経済の成長に伴う資金的な不足」が指摘できるようである。
その結果として、戦後の世界では、「民間金融機関のバランスシート大膨張」が発生したことが見て取れるものの、このときの注意点としては、以前から指摘している通りに、「バランスシートの非対称性がもたらすリスク」、すなわち、「資産価格の下落に伴う不良債権の発生」が存在することも理解できるのである。つまり、「1980年代の日本における土地と株式のバブル」からも明らかなように、「バランスシートの膨張過程で発生した含み益」が、その後、反動により、「巨額の不良債権」を発生させた状況のことである。
そして、この点における「現在の注意事項」としては、「不良債権」が、その後、「中央銀行」や「国家」へ移行し、間もなく、「財政ファイナンス」という「債務の貨幣化」が実行される可能性ともいえるのである。つまり、「30年ほど前に発生した不良債権が、居場所を変えながら膨張を続けてきた状況」のことでもあるが、今回の問題点としては、やはり、「世界全体で、同様の事態が発生している状況」とも理解できるのである。
別の言葉では、「1600年前後」に生み出された「時は金なりの」思想が、その後、「資本主義」という「お金が最も大切であると考える時代」につながり、現在では、「影も形も存在しない数字」が「お金」となった「デジタル通貨の時代」までもが生み出された状況のことである。しかも、現在では、「1991年のソ連崩壊」に衝撃を受けた「現在のBRICS諸国」が「資本主義の崩壊後」を見据えた状況とも思われるが、実際には、「西洋の唯物論的な文明」そのものが崩壊期を迎えている段階のようにも感じている。