本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.10.13
米国政府の債務残高が描くホッケースティック曲線
現在、「急膨張する米国政府の債務残高」が問題視され始めたが、この点に関して思い出されることは、1990年代半ばに議論された「米国政府の債務残高が描くホッケースティック曲線」である。つまり、当時は、「貿易赤字」と「財政赤字」の「双子の赤字」に悩まされた米国は、最後の段階で、「基軸通貨国であろうとなかろうと、債務不履行回避のために、財政ファイナンスを実施せざるを得なくなる」と考えられていたのである。
しかし、実際には、「デリバティブの大膨張」という「奥の手」を使うことにより、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」が可能だったものの、現在では、雪だるま式に膨れ上がった巨額の政府債務が、米国のみならず、世界全体に、大きな悪影響を及ぼそうとしているのである。つまり、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」という「目に見えない金融ツインタワー」が崩壊を始めているために、今後は、さまざまな問題が、世界的に噴出し始めるものと想定されるのである。
具体的には、「バランスシート不況」に関して、「民間企業や個人」のみならず、「民間金融機関」や「中央銀行」のすべてが、「資産価格の下落が生み出す不良債権」に悩まされ始める展開のことである。別の言葉では、「流動性の枯渇」が始まるとともに「資金繰り」に問題が出始める状況のことでもあるが、実際には、「倒産を回避するために、価格が下落した商品などを売却せざるを得ない事態」のことである。
そして、このような状況下で、政府や中央銀行が取れる手段は、「債務の貨幣化」と呼ばれる「財政ファイナンス」であり、実際には、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手」が消滅したときに、「紙幣の増刷」が実施される展開のことである。別の言葉では、「ハイパーインフレが発生する直接の手段」でもあるが、今回の問題点は、「一国だけではなく、ほとんど全ての国々で、同様の財政問題が発生している事実」ともいえるのである。
より具体的には、「村山節の文明法則史学」が指摘する通りに、「物質文明を基本とした西洋文明の終焉」のことでもあるが、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊」の時に発生した現象は、当時の「ローマ法」が役に立たなくなった状況だったとも伝えられているのである。つまり、一種の「無法状態」が発生する可能性でもあるが、この時に役立つのが、「法治国家」と「徳治国家の違い」を理解することでもあるようだ。具体的には、「人間が、西洋文明の最終段階で、どのようなことを行ったのか?」を理解しながら、「東洋の精神文明」を理解することであり、このような過程から、次の時代が始まるものと考えている。