本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.10.12

山一証券とデリバティブ

現在の世界的な金融混乱については、「1997年と似たような状況ではあるものの、規模的には約30倍程度の大きさではないか?」とも考えているが、この点に関して思い出されるのが、「山一証券の破綻事件」である。つまり、「1997年11月に破綻した山一証券」については、実際のところ、「7年前の1990年前後から、外資系証券会社の間で、『1兆円規模の飛ばし』の存在が噂されていた」という状況だったのである。

しかし、実際の展開としては、今回の「ジャニーズ問題」と同様に、「隠蔽され続けた不都合な真実」となったわけだが、実際には、「事件の発覚」とともに、世界の金融システムを揺るがすキッカケの一つとなったことも見て取れるのである。つまり、「どのような問題も、永遠に隠し続けることができず、必ず、表面化する」ということが、「真理」の一つとも思われるが、この点に関して、今回、大きな意味を持つのが、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」のようにも感じられるのである。

具体的には、「1997年から1998年にかけての金融システムの崩壊危機」を救ったのが、その後の「デリバティブの大膨張」だったことも理解できるが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降は、「デリバティブのバブル崩壊を、QE(量的緩和)で隠蔽し続けてきた状況」のようにも思われるのである。つまり、「問題の表面化により、世界の金融システムが崩壊するのではないか?」という危機感を抱いた「西洋諸国の金融当局者」が、「国債を買い付けることにより、きわめて異常な超低金利状態を作り出した状況」だったものと考えられるのである。

ただし、現在では、「中央銀行による国債の買い付け資金の調達方法」に問題が出始めており、実際には、従来の「民間金融機関などからの借り入れによる資金調達」が難しくなったものと思われるのである。つまり、「買い付け資金の枯渇状態」に見舞われたために、「金利上昇による国債魅力度の増加」を目論んだものの、実際の展開としては、「金利の支払い費用の増加」などにより、現在では、「債務の貨幣化」である「財政ファイナンス」の実施を迫られている状況とも想定されるのである。

そして、このような状況下で発生する事件として、「1997年の11月の山一証券の破綻」が思い出されたわけだが、「日本のバブル崩壊」と「デリバティブのバブル崩壊」とを比較すると、「約30倍」という規模の開きが存在するために、「これから、どれほどの事件が発生するのか?」が、現時点の最大の関心事とも言えるようである。