本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.2.19

イングランド銀行という名の貸金庫

日本では、現在、「銀行の貸金庫における盗難事件」が多発する状況となっているが、この点を、「世界の金融システム」に当てはめると、「イングランド銀行が保有する金(ゴールド)についても、似たような状況となっているのではないか?」とも感じている。つまり、「他国の政府が、イングランド銀行に預けている金(ゴールド)」などに関して、現在、「現物の金(ゴールド)が、本当に存在するのか?」という疑問が出ているからだが、実際のところ、この点については、以前から、「政府が保有する金が売却されていたり、貸し出されていたりする懸念」が指摘されていた状況だったのである。

より詳しく申し上げると、「金利の付かない金(ゴールド)」については、数十年前から、「売却して債券に交換すべきである」とか「貸し出して金利を稼ぐべきである」というような意見が出ており、その結果として、「いろいろな政府が、この方法を実施していた状況」だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降、世界全体が、「金(ゴールド)よりも、デジタル通貨などを偏重する時代」に入っていたために、最近では、「世界の金融史において、金(ゴールド)が、なぜ、重要視されてきたのか?」が無視されるような状況だったのである。

より具体的には、「イングランド銀行や米国のフォートノックスで保管されている金(ゴールド)」についても、「長い間、監査が実施されていなかった」というような状況とも言われており、この点については、前述の「日本の貸金庫」と同様に、「金庫の中身を、即座にチェックすべき段階」に差し掛かったものと考えられるのである。別の言葉では、「政府や中央銀行への信用(クレジット)」が失われた結果として、本来の「マネー」である「金(ゴールド)」への関心が高まっていることが、現在、「金庫の中身」に関する事件が発生している理由のようにも感じられるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「現代のマネーやクレジット」に関して、「どれほどの残高が存在するのか?」を理解することであり、実際には、「氷のような状態の金(ゴールド)」と「水のような状態の紙幣」、そして、「水蒸気のような状態のデジタル通貨」の現状を認識することである。具体的には、「デジタル通貨が枯渇するとともに、紙幣の大増刷が世界的に実施される可能性が高まっている段階」のことでもあるが、その次の段階として想定される展開は、やはり、「大量の紙幣が、高速回転で、一斉に、現物市場に殺到する状況」、すなわち、私が想定する「80億人の換物運動」が、間もなく、始まる可能性のようにも感じている。