本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.2.18

リフレーション政策とクラウディングアウト

民間部門から資金を吸い上げながら、中央銀行による国債購入を促進する「リフレーション政策」については、当然のことながら、「クラウディングアウト」という「民間金融機関の資金枯渇と金利上昇」を引き起こす結果が導かれるものと考えている。しかも、この過程では、「民間金融機関が保有する債券価格が金利上昇により急落する事態」も引き起こされるために、結果としては、「民間金融機関に大量の不良債権が発生する状況」も想定されるのである。

つまり、現在、「米国のみならず、先進各国の金融機関に、大量の不良債権が存在する」といわれている状況については、基本的に、「1980年代初頭から始まった金利低下」、および、「その推進力となったデリバティブの残高大膨張」が原因の一つとして挙げられるものと考えられるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」から始まった「政府の信用を本位とした通貨制度の存在」を抜きにしては、現在のような「デジタル通貨の残高が大膨張しながら、コンピューターネットワーク内で、さまざまなバブルを造り出していく展開」が考えられなかった可能性である。

ただし、現在では、すでに始まった「世界的な金利上昇」により、ケインズが指摘する「通貨の堕落がもたらす社会秩序を破壊する力」が働き始めた状況のようにも感じられるのである。つまり、「インフレの過程では、経済法則の隠れた力をすべて、社会秩序を破壊する方向に動員でき、しかも、社会の秩序が破壊されていく理由を、百万人に一人も理解できない状況」と言われるような事態が発生しているものと思われるのである。

そのために、今後の注目点としては、「金融界の大量破壊兵器」と言われる「デリバティブ」の破裂時期を考えることとも想定しているが、この点については、「自然界の大地震」などと同様に、「非線形のダイナミクス」を理解する必要性があるものと感じている。つまり、「実際の大地震が発生するまで、それまでに溜まっていた歪みが認識されない状況」が、現在の金融界で発生している可能性のことでもあるが、この点に関して、現在、必要とされることは、「世界的な金利上昇が、今後、どれほどのスピードで先進各国の不良債権を増加させるのか?」を考えることとも思われるのである。

より具体的には、「メガバンクの破綻」などが発生し、「2008年のリーマンショック」が再来する可能性でもあるが、今回の注目点は、やはり、「2008年のようなQE(量的緩和)」ではなく、本格的な「紙幣の大増刷」が始まる展開だと考えている。