本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.7.26

智慧出でて大偽あり

老子の第18章に「智慧出でて大偽あり」という言葉があるが、現在の世の中は、まさに、この状態にあるようだ。具体的には、「良い大学を出れば大企業に就職ができ、一生、安泰な生活を送れる」というような誤った考えが広く信じられているために、「子供の情操教育が疎かになり、いじめ事件が横行している」という状態のことである。あるいは、「お金儲けのために、政府やメガバンクまでもが、平気で不正や詐欺などを行う」という状況でもあり、このことは、「多くの人々が、お金儲けのためなら、どのような嘘でも付く」という状態を意味しているようである。

しかし、その結果として起きたことは、「いじめ事件」や「LIBORの不正操作」からも明らかなように、「隠蔽」や「嘘」で塗り固められた「大偽の社会」が形成されたということであり、実際には、「誰も信用できない」という人間関係が生まれているのである。別の言葉では、「お金」の根本である「信用」が崩壊していながらも、依然として、「お金儲けに奔走する人類」が激増しているのだが、このような社会が行き着く先は、やはり、「通貨の価値が失われる」という状況しか考えられないようである。

また、本来は、「人」という文字が示すように、「人と人とが寄り添いながら助け合う」ということにより「絆」が生まれ、その後に、「信頼関係」が築かれ、その結果として、「お金」が生まれるのだが、現在では、反対に、「形だけで内容のないお金」を求めて、壮絶な「奪い合い」が起きているのである。別の言葉では、「人がどうなろうとも、自分さえよければいい」と考える人が増えたために、単なる「数字」にすぎない「現代のお金」の「奴隷」となっているのである。

そして、このような人々が集まる組織においては、「不祥事は隠蔽され、嘘で塗り固めた報告が行われる」という状況になるようだが、現在では、「原発」や「オスプレイ問題」、あるいは、「いじめ問題」などで起きているようである。つまり、われわれの生活を脅かすような重大事にまで、「大偽」が蔓延(はびこ)っているのだが、このことが、「文明法則史学」が示唆する「文明の大転換」が起きる原因とも言えるようである。

また、今後は、西洋が主導した「貨幣を中心にした物質文明」から、東洋主導の「精神文明」へと、大きな変化が起きるものと思われるが、この時の中心となるのが「祭り」であり「天地自然への感謝」になるようだ。そして、この観点からは、「2013年」に予定されている「伊勢神社の式年遷宮」が、大いに注目されるものと考えている。