本間宗究(本間裕)のコラム
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2012.8.17
日本人の預金神話
「1995年から2010年」という期間は「崩壊の時代」であり、この時には、戦後に形成された「さまざまな神話」が崩壊することを想定していた。そして、実際に、「銀行の不倒神話」や「終身雇用神話」、あるいは、「日本の安全神話」などは完全崩壊し、反対に、現在では、「このような神話が存在した」ということについて理解する若者が少なくなっている状況とも言えるようだ。
しかし、現状をよく分析すると、いまだに存在する神話が、一つだけあるようだが、それは、「日本人の預金神話」である。つまり、「預金さえ持っていれば、どのような事態になっても安全だ」という考えのことであり、結果として、多くの日本人は、「いまだに預金にしがみついている状況」とも言えるのである。そして、「なぜ、このような事態が、依然として、継続しているのか?」ということが、今後の投資においても、最も重要なポイントの一つだと考えているが、結局は、過去5年以上に亘って行われてきた、世界的な「金利の不正操作」や「国債の買い支え」などに、根本的な原因が存在するようだ。
具体的には、先進国が協調して、歴史上からも、きわめて異常な「超低金利政策」を実行したのだが、この結果として、現在では、「日米はゼロ金利」、そして、「イギリスやECBも、それぞれ、0.5%や0.75%」という、きわめて低い政策金利が継続しているのである。そして、「このような金融政策の目的は、いったい、何だったのか?」ということが、現在、世界的に解明されつつあるのだが、この点については、今までに申し上げたように、「約6京円もの残高があるデリバティブ」と「日米だけで、約2300兆円も存在する国家債務」の「延命」が主な目的だったとも考えられるのである。
つまり、「目に見えない、二つの金融ツインタワー」を守るために、違法な行為までもが行われてきたようだが、現在では、「先進国の国債価格が急落を始めている」という状況にもなっているのである。そして、間もなく、「2008年のリーマンショック」よりも、はるかに大きな事件が起きることが予想されるのだが、それは、「預金神話の崩壊」であり、実際には、「安全だと信じていた預金や紙幣が価値を失う」ということである。
別の言葉では、「1923年のドイツ」や「数年前のジンバブエ」のように、「預金」や「紙幣」を持っていても、「食料」などが買えなくなる事態のことだが、この点に気付いていないのは、現在の日本人だけであり、この時には、現在のような「パンとサーカス」の状況も、継続が難しくなることが想定できるようだ。