本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.8.27

戦争と統制経済

60年ほど前の世界を振り返ると、「第二次世界大戦」の前後に起きたことは、世界的な「統制経済」と言われる状況だった。具体的には、「戦費の調達」や「戦後の混乱」を避けるために、さまざまな商品の価格が統制され、また、超低金利政策が実施されたのだが、このことは、1952年頃まで続いていたようである。つまり、「戦争」という非常事態に際しては、「全体主義」の勃興により国家の力が強くなり、実際には、「約10年」という長い間、国民は我慢の生活を強いられていたのである。

そして、60年後の現在を考えると、「武力による戦争」と「目に見えない金融戦争」の違いはあるものの、実際には、一種の「統制経済」とも言えるような情勢になっているようだ。つまり、「超低金利政策」を継続するために「LIBORの不正操作」が行われたり、あるいは、「デリバティブの決算」に関して「恣意的な価格で計上してもよい」というような変更が行われたりしている状況は、まさに、「国家の力が強くなり、権力の暴走が起きている状況」とも言えるからである。

あるいは、長年にわたり「ゼロ金利政策」が継続され、「預金を保有していても、ほとんど金利が付かない状態」や、「国債の買い支え」が世界的に行われ、また、「商品や為替などの市場が、プログラム売買によりコントロールされている」というような状況についても「現代版の統制経済」とも言えるようだ。そして、この「目的」としては、「国債価格の下落」や「デリバティブ・バブルの崩壊」を防ぐためであり、結果としては、「ありとあらゆる政策や手段が行使された」という状況でもあったのだが、いよいよ、「2012年の7月」に、大きな転換が起きたようである。

つまり、「先進国の国債価格」が値下がりを始め、同時に、「金(ゴールド)を始めとした商品価格」や「世界の株式」が上昇を始めたからだが、今後の展開を考えると、実に凄まじい状況が想定できるようだ。具体的には、「先進国の国債が借金爆弾となって破裂し、世界中の中央銀行が、紙幣の増刷に走らざるを得なくなる状況」が想定されるからだが、今回の「目に見えない金融戦争」においては、世界中の人々が、「戦争の存在」そのものに気付かず、また、「約6京円から8京円ものデリバティブが、一握りのメガバンクによって保有されていた」という事実も知らされていないような状況だったのである。

しかし、現在では、多くの人が「デリバティブが史上最大のバブルである」と気付き始めており、いよいよ、「歴史的なバブルの崩壊」が起きることになるようだ。