本間宗究(本間裕)のコラム
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2012.9.4
赤字国債と財政の崖
「赤字国債発行法案の可決」が遅れることは、ほぼ決定的な状況となり、間もなく、「予算の抑制案」が財務省から発表される予定となっているが、結果としては、このことが、「日本人の意識」を変えるとともに、今後の大変化の「キッカケ」になる可能性があるようだ。つまり、現時点で予定されている「地方交付金の配分を先送りする」という手段が、「地方財政にまで、大きな影響を与え始める」という状況が考えられるとともに、「財政の崖」という、現在、アメリカで問題視されている点が、今後、世界的な動きになる可能性が存在するからだ。
具体的には、今回の「法案の未可決状態」により、「約38兆円もの赤字国債」が発行できない状況になっているのだが、この点を詳しく分析すると、たいへん興味深い点が浮かび上がってくるのである。つまり、「約68兆円の基礎的財政収支」と「約22兆円の国債費」との関係のことだが、この時に考えなければいけない点は、「国債費は、決して、先送りできない費用として計上される」ということである。別の言葉では、「金利が支払えなくなり、また、元本の償還ができなくなれば、現在のギリシャと同じ状況である」ということだが、このような状況こそが「国家の破綻」を意味するのである。
そのために、今回は、早いうちに、この法案を可決する必要性があるのだが、より重大な問題は、「約1000兆円も存在する日本の国家債務」に関して、「今後、どれほどの利払いが必要とされるのか?」という点である。つまり、現在の「超低金利」の状況下でも「約22兆円の国債費」が必要とされているのだが、今後、金利の上昇局面に遭遇すると、この費用が急増することが考えられるのである。そして、その時には、「基礎的財政収支」の部分が、大幅に削減されるという状況も想定されるようだが、かりに、日本の金利がイタリアやスペインのようなレベルにまで急騰すると、「ほとんどの予算が、国債費に消えてしまう」ということが考えられるのである。
そのために、今までは、先進国の金利を低く抑え、また、国債価格の下落を防ぐ手段が取られてきたようだが、さすがに、「GDPの2倍以上もの国家債務」というのは、さまざまな「歪み」をもたらすとともに、時間が経てば経つほど、「先送り」が難しくなっているようだ。そして、最後には、「中央銀行」という「最後の貸し手」により、「大量の紙幣が増刷され、全ての借金が返済される」という伝統的な手法が取られることが予想されるのだが、今回の「政治の混迷」は、この事実を、国民に広く知らせるための「最も手っ取り早い手段」だった可能性もあるようだ。