本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.9.18

アメリカのQE3

9月13日の「FOMC」において、「QE3(量的緩和の第三弾)が発表された」ということが「市場の理解」でもあるようだが、「発表の内容を吟味すると、まったく違った姿が見えてくる」というのが、今回の「私の感想」である。つまり、「なぜ、国債を買わずに、MBS(不動産担保証券)を買うことに決めたのか?」ということだが、本来の「QE」は、「中央銀行のバランスシートを拡大させて、国債を買い支える」ということが、主な目的だったのである。

しかし、今回は、「不動産に関連する有価証券を無制限に買い付ける」という決定がなされたのだが、このことは、「実体経済」と「マネー経済」との関係に、劇的な大変化を起こす可能性が存在するのである。つまり、今までは、「マネーの歯車」を大膨張させながらも、同時に、「マネーの回転を抑える政策」が取られてきたのだが、今回は、反対に、「土地の価格を上昇させる」という効果があり、結果として、「実体経済」と「マネー」の歯車が、同時に、急回転を始める可能性が高くなっているからだ。

別の言葉では、今までに繰り広げられてきた「国債と金とを巡る金融大戦争」に、最後の決着が付いた可能性があり、今回の「バーナンキ発言」は、一種の「敗北宣言」だったものと考えている。そして、この考えが正しいとしたら、今後は、「金利の急騰」、すなわち、「今まで買い支えてきた国債価格の暴落」が、世界的に始まることが想定されるのだが、実は、このような状況こそが、「リフレーション政策」という「中央銀行のバランスシートを膨張させて、国家債務問題を先送りする政策」の後に起きることである。

つまり、実体経済の「約20倍」にも膨らんだ「世界のマネー」が、急速に動き出し、さまざまな市場に流れていく状況のことだが、過去の経験則から予想されることは、今後、「約6か月間のギャロッピング・インフレ」が起き、その後に、「約6か月間のハイパーインフレ」に移行するということである。そして、その時には、「先進国の国債価格」が、「2年ほど前のギリシャ国債と同様に、一挙に、暴落を始める」という事態も想定されるのだが、このような状況こそが、「信用崩壊の波が、日米英の先進国にまで波及した」ということを意味しているのである。

そして、今後は、「信じられないほどの大変化」が起きるものと考えているが、具体的には、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの価格が暴騰を始めるということであり、同時に、「預金や国債などの価値が失われる可能性」のことである。