本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.9.24

日銀のバランスシート

日銀のバランスシートに変化が起き始めているが、その要因としては、「国債の大量買い付け」が指摘できるようだ。具体的には、「9月10日現在で、約104兆円にまで、国債の保有額が増えている」という状況であり、今までの推移としては、「過去6か月で約17兆円」、「過去1か月でも約5兆円」という増加ペースになっているのである。そして、この理由として考えられることは、「民間銀行に余裕がなくなったために、日銀が大量の国債を買い付けている」という点が指摘できるようだが、問題は、「今後、どのようにして、日銀が資金調達をするのか?」ということである。

つまり、「バランスシートの膨張」が意味することは、「資産の拡大」であるとともに、当然のことながら、「負債の増加」でもあり、この時に、「日銀が、誰から資金を借りるのか?」という大問題が存在するのである。別の言葉では、現在のような「当座預金の急増」という「民間銀行からの借入金」だけでは間に合わなくなることが考えられるとともに、今後は、「紙幣の増刷」に頼らざるを得なくなるものと思われるが、「ある日突然に、国債価格が急落し、日銀券の発行残高が急拡大する」という状況も考えられるのである。

具体的には、現時点で「約80兆円」にまで膨らんでいる日銀券の残高が、これからの「国債の買い付け金額」次第では、一挙に、大膨張を始めるということである。そして、この増え方次第では、「為替」や「金利」に、大きな影響を与えることも想定されるのだが、基本的には、「大幅な円安」と「金利の急騰」が考えられるようだ。しかも、「GDPに対して、最も、国家債務の比率が高い日本」において、このような「インフレ策」が取られた場合には、その他の先進諸国にも、大きな影響が及ぶことが想定できるのである。

つまり、日本が世界に先駆けて「ゼロ金利政策」を採用し、かつ、「中央銀行のバランスシートを急拡大させて、国債を買い付ける」という、いわゆる「リフレーション政策」を行ってきたのだが、今後は、世界に先駆けて、「紙幣の大増刷」が行われる可能性が存在するのである。そして、かりに、この方法が取られた場合には、今後の日本は、「金融面の焼け野原状態」になることが考えられるようである。

具体的には、「資源の乏しい日本」において、「円安」や「金利高」が起きた場合には、「急激な輸入インフレ」が起きるとともに、我々の保有する「金融資産」が、一挙に価値を失うということである。また、その時には、多くの人が、一斉に、「金(ゴールド)」に殺到する状況も考えられるようである。