本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.10.29

歴史のダイナミズム

歴史を研究すると、実に多くのことに気付かされるが、このことは、「自分が、いかに、何も知らないか?」ということの証明とも言えるようだ。つまり、「人生は、一生、学びの連続である」ということだが、以前に伺った話として、「悟りというのは、ある瞬間に、全てのことがわかるというようなものではなく、生涯、学び続け、向上し続けることに気付くことが本当の悟りであり、決して終わりがないものだ」というものがあったが、このことは、「歴史」や「相場」の研究だけではなく、全てに当てはまる言葉でもあるようだ。

特に、現在のような「時代の大転換期」においては、「歴史のダイナミズム」を理解し、「決して、短絡的な思考法に囚われない」ということが重要だと考えているが、多くの人が陥っている罠(わな)としては、「自分が経験したことが無いことは、起きるはずがない」と考えがちになることである。つまり、「自分の人生経験から得られた知識」が全てであり、「過去にどれほどの大変化が起きていたのかを考えようともしない」ということである。

具体的には、「お金の奴隷」となった現代人が、「現代のお金が、どれほど異常な状態になっているのか?」という点について、ほとんど「思考停止の状態」になっているということである。そして、「預金さえ持っていれば、一生、生活には困らない」というような「預金神話」に囚われている人も数多く見受けられるのだが、このことは、「60数年前の敗戦時」にも同じような状況だったようである。

具体的には、「実際に戦争に負ける」という経験をしない限り、「日本は神の国であり、決して、戦争に負けることはない」という「神話」から解き放たれなかったということである。しかし、その後の「経済発展」については、ご存じのとおりに、「僅か数十年で、世界第二位の経済大国にまでのし上がった」という状況だったのだが、このキッカケとなったのが、「敗戦のショック」だった可能性もあるようだ。

つまり、「大きなショック」を受けたことにより、その後の「奮起」に繋がった可能性があるのだが、このような観点から言えることは、現在の「預金神話」や、これから想定される「預金が紙屑になる事態」というのは「天の計らい」とも考えられるようである。具体的には、最も大きな衝撃を日本人に与えることにより、今後の「世界で、最も厳しい少子高齢化社会」を乗り切るための「エネルギー」を与えてくれている可能性のことだが、私としては、できるだけ多くの人が「株式」や「貴金属」、そして、「土地」などの実物資産を保有することにより、今後の混乱期を乗り切っていただきたいと思う次第である。