本間宗究(本間裕)のコラム

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2012.11.5

株を忘れた証券マン

童謡の「かなりあ」という曲に「歌を忘れたカナリアは、後ろの山に棄てましょか」という文章があるが、どのような人や会社においても、「本来の使命を忘れた時には、世間から、このような目で見られる」ということを象徴した言葉とも言えるようだ。そして、このことは、現在の証券市場にも当てはまるものと思われるが、実際には、「株を忘れた証券マン」が数多く存在し、また、「証券会社自体も、株式ではなく、債券や投信の販売に力を入れている」という状況になっているのである。

このような結果として、「株式市場」には資金が回らず、また、「株価の低迷により、日本全体が苦境に陥っている」ものと考えているが、実際には、「国債にあらずんば、資産にあらず」というように、多くの資金が「国債市場」へと流れているのである。そして、このことが、典型的な「クラウディングアウト」と呼ばれる現象でもあるが、少しだけ視点を変えると、「現在は、またとない日本株投資のチャンスである」とも言えるようだ。

つまり、私が想定する「10年ごとに投資の主役が変化する」という「富の移転ルール」から言えることは、「現在の日本株は、10年前の『金(ゴールド)』と、よく似た環境にある」ということである。具体的には、「1980年から約20年にわたり下げ続けた金が、再び、輝きを取り戻したのが、2002年前後からだった」ということだが、当時は、「ほとんどの専門家が弱気となっており、誰も、金(ゴールド)を勧める人がいなかった」というような状況だったのである。

しかし、その後に起きたことは、「金価格の上昇」であり、また、「世界的な金融混乱」でもあったのだが、この点については、「1971年のニクソンショック以降、世界のマネーが異常な大膨張をした」ということに根本的な原因が存在したのである。つまり、現代の「お金」が信用できなくなっているために、「金(ゴールド)」に対して多くの人が強気になっているのだが、結果として、10年前とは打って変わり、「世界各国の政府や中央銀行までもが、継続して、金を買い増している」ということが見て取れるのである。

ところが、一方で、「日本株に対しては、万人が弱気になっている」という状況であり、歴史的にも、きわめて割安な状態に放置されているのだが、「4%前後の利回り」で「PBRが0.5倍前後」、しかも、「PERが10倍以下」というような割安な銘柄が、再び、脚光を浴びるためには、「象牙の舟に銀のかい、そして、月夜の海に浮かべる」という条件が必要なようである。