本間宗究(本間裕)のコラム
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2012.11.6
赤字国債発行法案
最近では、「赤字国債発行法案(特例公債法案)」が、マスコミで大騒ぎの状態になっていたが、多くの国民にとっては「対岸の火事」の状態であり、内心では、「それほど大きな問題にはならない」とも考えていたようである。つまり、「自民党の合意により、間もなく、この法案が通る」と考えられていたために、報道されたような「11月末で、国家資金が枯渇する」とか、あるいは、「12月初めから、国債入札が停止する」というような事態には陥らないという理解がなされていたようだが、これからの展開を考えると、「実に、大きな問題が存在する」とも言えるのである。
具体的には、「約90兆円の一般予算」のうち、現在では、「22兆円」が「金利の支払い」や「国債費」に使われており、また、「68兆円」が、「福祉予算」や「地方交付税」、あるいは、「公務員の給料」などに使われているのである。そして、今回、問題となったのは、「90兆円の予算のうち、38兆円の資金が手当てできなくなる」ということだったが、今後、法案が可決されたとしても、「金利の上昇」が起きた場合には、再び、同じような問題が浮上してくるのである。
つまり、「22兆円の金利や国債費が、今後、どのような状況になるのか?」ということだが、かりに、「金利が急騰し、スペインやイタリアのような状況に陥った」とすると、その時には、「金利の支払いだけで、40兆円から50兆円もの金額が必要になる」という状況が想定されるのである。そして、その時には、当然のことながら、「68兆円の部分が削られる」という状況が考えられるのだが、このことは、「赤字国債発行法案が可決されない場合と同様の影響を及ぼす」ということである。
しかも、現在では、「毎月の国債入札」において、「約40兆円もの国債が発行されている」という状況であり、また、「このうち、約30兆円が短期国債の発行である」というような状態にもなっているのである。つまり、資金繰りに窮した場合に見られがちな、「短期資金の導入により、自転車操業の状態になる」ということだが、実は、「1991年のソ連崩壊」の時にも、似たような状況が起きていたのである。
つまり、「長期国債の発行」が難しくなり、「短期国債の発行」に頼ったのだが、すぐに、この方法も行き詰まりを見せ、結局は、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、「インクが無くなるまで紙幣の増刷を行った」ということだが、現在の日本も、それほど大きな違いはなくなってきたようである。