本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.2.26

金に対する全面攻撃

今年の2月は、「金(ゴールド)」に対する総攻撃が起きたようだが、具体的には、「マスコミ」による「ネガティブ・キャンペーン」が行われ、同時に、「大量の売り叩きが起きた」ということである。つまり、2月15日に、アメリカのメディアが「金価格は大天井を付け、今後は暴落する」というような意見を述べ、同時に、「デリバティブ」などを利用することにより、「金の先物価格」を強引に押し下げた可能性が存在するのである。

しかも、この時に、「ジョージ・ソロス氏などが、金を売却した」というニュースも流れ、結果として、「金の価格が、一挙に、急落する」という事態に見舞われたのである。そして、このことは、典型的な「国債と金とを巡る金融大戦争」によるものだと考えているが、今回は、「中国の旧正月の期間」に行われたために、予想以上の効果があったようだ。

しかし、一方では、海外で、多くの専門家が、一斉に、反論を始めている状況でもあるのだが、具体的には、「金価格は、今回の下げをきっかけにして、今後、バブル的な動きに変化する」というものである。つまり、今回の「金に対する売り叩き」は、反対に、「世界的な金融大戦争」の実態を、世界中に知らしめるとともに、「国債を守る陣営」にとっては、「最後の決戦」になった可能性も存在するのである。

つまり、「先進国の国債価格」が、間もなく、本格的な急落局面に見舞われようとしている段階で、このような「無謀な売り仕掛け」が行われた可能性があるために、「今回の総攻撃は、日米欧の国家としての体力を、一挙に、消耗させたのではないか?」ということである。別の言葉では、世界の「マネーの歯車」が、すでに回転を始めており、今後は、より一層、世界の資金が、「国債」や「預金」などの「フィアットマネー(政府が発行する不換紙幣)」から、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの「実物資産」へと、大きく移行することが想定されるのである。

このように、現在では、「約5年」にわたる「リフレーション政策(通貨の膨張政策)」が終了し、すでに、「ギャロッピング・インフレ」の段階に差し掛かっているものと考えているが、この点については、どうしても、理解がされにくいようである。そして、ケインズが主張するように、「誰も気づかないうちに、通貨の価値が激減する」という状況が考えられるのだが、現在の「円安」が意味することは、「日本の資産」が目減りを始めており、「株価の上昇は、その目減りを補っている」ということである。しかし、ほとんどの人は、「混乱の本質」に気付かず、「単に、株価の上昇を喜んでいるだけ」とも言えるようである。