本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2013.3.18

キプロスの金融混乱

日本時間の3月18日に、突如として明らかになった「キプロスの金融混乱」は、今後の世界情勢を考える上で、きわめて大きな意味を持っているようだ。つまり、「100億ユーロ(130億ドル)をキプロスに支援する代わりに、10万ユーロ超の額の預金に、ある一定の課徴金を課す」という内容だからだが、このことは、「銀行預金者に負担を求める」という、一連のユーロ圏加盟国支援策としては「前例のない措置」とも言えるのである。

別の言葉では、現在の「信用バブル」や「預金神話」を崩壊させる「キッカケの事件」になる可能性が高まっているのだが、このことは、「第一次世界大戦」が、「サラエボ事件」という「オーストリアの皇太子が一発の銃弾によって殺害された」事件を契機に開戦したことと、似たような意味を持っているようだ。つまり、「ユーロ加盟国」の中でも、影響力がほとんどないと思われていた「キプロス」の金融混乱により、「ユーロ」のみならず、「ドル」や「円」までもが、大きな影響を受ける可能性が存在するのである。

具体的には、現在の通貨制度とも言える「信用本位制」が、この事件をキッカケにして、完全崩壊する可能性が出てきたのだが、実際には、「キプロス問題」の裏側には、「ロシア」が存在するとも言われている。つまり、「タックスヘイブン」や「マネーローンダリング」などで、いろいろな「噂」が存在した「キプロス」の資金は、主に「ロシアの富裕層」が出資していたとも言われているのだが、今回の問題点は、「一部とはいえ、その預金が価値を失う」という事態が想定されていることである。

このように、今回の事件は、単純に、キプロス一国の問題ではなく、実際には、現在の「通貨制度」や「金融システム全体」を揺るがすほどの大問題になる可能性が存在するものと考えている。つまり、現在の「通貨」は、「フィアットマネー(政府が発行する不換紙幣)」となっており、実際には、「銀行などに存在する、単なる数字」へと変化しているのだが、今までは、この点が、ほとんど認識されていなかったのである。

しかし、今回は、「絶対に安全だと思われていた銀行預金」に対して、「ある日突然に、価値が失われる」という事態が発生する可能性があり、その結果として、「先進国の預金も、このような状態に陥るのではないか?」という疑心暗鬼の状態になりかかっているのである。しかも、この時に、「日銀総裁の交代」により、「日本」で「無制限の資金供給」が行われることも、「信用バブルの崩壊」に拍車をかける可能性があるようだ。