本間宗究(本間裕)のコラム
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2013.3.29
世界的な信用崩壊
「キプロスの金融混乱」に端を発した「信用崩壊の波」は、今後、世界に波及していくことが想定されるが、この時に参考になるのが、「1997年の信用収縮」だと考えている。具体的には、「タイから始まった信用収縮の波が、次ぎから次へと連鎖反応を起こし、最後には、アメリカのLTCM事件にまで行き着いた」という状況のことだが、この時に起きたことは、「民間銀行の破綻」であり、「国家」そのものは、現在に比べると、「盤石の状態」でもあったのである。
つまり、「民間銀行で発生した不良債権を、全面的に国家が引き受けた」という状況でもあり、その結果として、「民間銀行は、一時的に、危機を脱した」とも考えられたのである。しかし、現在では、「最後の砦」とも言える「先進国の全て」が大量の国債を抱え「資金繰りに行き詰る」という前代未聞の事態に見舞われているのだが、驚いたことに、「ほとんどの人は、いまだに、危機感を抱いていない状態」とも言えるのである。
具体的には、「国債価格が値上がりをしているから、国家の資金繰りは安泰だ」、あるいは、「中央銀行が国債を買い付ければ、国債価格の暴落は起きない」というような考えが市場を支配し、実際に、「日本国債」を中心にして、異常な「バブル状態」が発生しているのである。別の言葉では、「国債価格が暴落すると、預金や年金、あるいは、保険など、全ての金融資産が、大きな被害を受ける」という点を、心の中で認識しながらも、「そのようなことが起きたら大変なことになる」、だから、「そのようなことが起きるはずがない」という「根拠のない楽観論」に頼っている状況とも言えるようである。
つまり、「1990年」や「2000年」の時に起きた「バブル崩壊」の時と、ほとんど同じ心理状態になっているものと考えられるが、今回の「キプロスの財産税」は、その楽観論を、一挙に打ち砕く効果があったようである。具体的には、「政府は、最後の段階で、財産税までも徴収する」という事実を、世界中の人々が認識したからだが、本当に怖いのは、「消費税」や「財産税」などの「目に見える税金」ではなく、「紙幣の大増刷」により、「国民の知らないうちに、資産が没収される」という「インフレ税」だと考えている。
そのために、今後の注目点としては、「スペインやイタリアなどで、取り付け騒ぎが起きるのか?」ということであるとともに、「日米の国債価格が大天井を付けた後に、どのような事が起きるのか?」ということだが、実際には、「日米英を中心にして、大々的な紙幣の増刷が始まる」という事態が想定されるようである。