本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.4.7

為替のソロスチャート

今から20年近く前の1996年に、私がアイデアを提供し、大和総研のエコノミストがデータ検証をすることにより、新たな為替の理論を創ることができた。具体的には、「信用乗数(マネーサプライ÷マネタリーベース)」を、二国間で比較することにより、90%以上の確率で為替の予想が付いたのだった。そして、その数年後に、ジョージ・ソロス氏がこの理論を理解することにより、現在の「ソロスチャート」と呼ばれるものができたものと考えている。

しかし、この時に大切なことは、「マネタリーベース」を比較するのではなく、「信用乗数」を比べることでもあるのだが、「ソロスチャート」には、この点に関して、大きな誤解が存在するようだ。つまり、基本的な考え方としては、「信用力のある国には資金が流れ、通貨が高くなる」ということであり、この「信用力」の判定方法としては、「信用乗数」を比較することが重要な点とも言えるのである。別の言葉では、「中央銀行が出す資金」である「マネタリーベース」を比較するのではなく、「マネーサプライ」という「民間銀行が、どれほど信用創造を行っているのか?」という数字を判断することである。

そして、「信用乗数が高い国ほど、国家の信用力があり、また、為替が強くなる」ということが、この理論が意味することだったのだが、残念ながら、「2002年ころから、為替デリバティブの大膨張により、正確な数字が取れなくなった」というのが、実際の状況でもあった。しかも、過去数年間は、「世界の金融市場が、一部のメガバンクによって、不当に操作されていた可能性」も存在するために、より一層、為替の予測が難しくなっていたのだが、現在では、急速に、「金融のコントロール」が効かなくなってきたようである。

そのために、再度、「マネタリーベース」が注目を浴びてきたものと考えているが、この時に重要な点は、やはり、「通貨制度」や「金融システム」の「原点」に戻り、「過去100年間に、どれほどの変化が起きてきたのか?」を理解することである。つまり、現在の通貨制度は、1971年の「ニクソンショック」をきっかけにして、大きく変貌したということだが、この点が理解できない場合には、「単に、著名人の意見を鵜呑みにしがちになる」ということが起きやすくなるのである。別の言葉では、「世界の金融市場で、どのような事が起きているのかを、歴史を繙(ひもと)きながら、自分の頭で考える」ということだが、残念ながら、「マニュアル的な思考法」に慣らされた現在の日本人には、この点が、難しくなっているようである。