本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.4.28

デマンドプルとコストプッシュ

現在では、いろいろな商品が値上がりを始めているが、経済学の教科書では、この時に、大別して二つのパターンが存在すると言われている。具体的には、「コストプッシュ」と「デマンドプル」と呼ばれるものだが、「コストプッシュ」というのは、「燃料」や「賃金」などの価格上昇により、最終製品の価格に転嫁せざるを得ない状況のことである。そして、「デマンドプル」というのは、ある商品に大きな需要が発生し、供給が追い付かないために、価格が上昇するパターンのことである。

そして、このことを、現在の具体例に当てはめながら、「需要」と「供給」の曲線が、どのように変化しているのかを考えると、「これからの世の中で、どのような事が起きるのか?」が見えてくるものと考えている。つまり、現在、「イカ漁の休業」により、「イカの価格が上昇するのではないか?」と危惧されているのだが、このことは、典型的な「コストプッシュ」を表しており、実際に起きることは、「供給曲線が左側へ移動する」という「供給の減少」であり、結果として、「価格が上昇するパターン」のことである。

また、「金の価格」については、今後、典型的な「デマンドプル」の状態が予想されるようである。具体的には、「1979年の金バブル」の時と同様に、「供給に制限のある商品」は「供給曲線が、ある一定の水準で、ほぼ垂直に上昇する」という状況下で、「世界中の個人投資家が、金に対する需要を強める状況」のことである。つまり、「ないものねだり」のような状態になることが想定されるのだが、この時に起きることは、「わずかな需要の増加でも、価格が垂直な供給曲線を駆け上がる」ということである。

このように、これからの投資において重要なことは、「世界に、どれだけの資金が存在するのか?」を理解し、また、「その資金が、今後、どの商品に向かい、新たな需要を発生させるのか?」を考えることである。そして、「金融商品」のように、「コンピューターの中で、人為的に創り出せる商品」と「長い時間をかけて、自然が作り出した商品」とを区別する必要性があるものと考えている。

具体的には、「過去数十年間に、大量に生み出された金融商品」は、「根本の信用」が崩れ去った時には、「あっという間に、その価値を失う」ということであり、また、「1971年のニクソンショックまでは、約6000年間、金が本当の通貨だった」ということだが、今回の「金のブラックマンデー」は、世界中の人々に、「通貨の歴史」を考えさせるきっかけになった可能性があるようだ。