本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.4.29

金のバックファイア

4月12日から15日にかけて起きた「金価格の急落」については、現在、実情が明らかになり始めているが、基本的には、「キプロスの財産税」が、問題の発端だったようである。つまり、「自分の預金などに、新たな税金がかけられ、資産価値が、大きく損なわれる恐れがある」と危惧した個人投資家が、ヨーロッパにおいて、「3月から、大量に金や銀の現物を買い始めた」という状況でもあったのである。

そして、結果としては、「金」や「銀」の在庫が急減し、「ABNアムロ銀行などは、金の現物受け渡しを中止する」という発表までしたのだが、問題は、「世界の先進国」や、「英米のメガバンク」を中心にした「国債を守る陣営」だった。つまり、彼らが行ってきたことは、「ゼロ金利政策」などの「歴史的な超低金利政策」を実行しながら、同時に、「LIBORの不正操作」までも行う事により、「世界の金利を、不当に低く抑え、デフレ的な現象を演出すること」でもあったからである。

また、この時に必要なことは、「貴金属の価格を抑え、世界の資金が実物資産へ向かわないようにする」ということであり、最近では、「金利の不当操作」に続いて、「金価格の不当操作」までもが噂されているような状況でもあったのである。そのために、今回は、「前代未聞の規模で、金価格の売り叩き」が行われたようだが、結果としては、「金のバックファイア(逆噴射)」を引き起こした可能性が存在するのである。

つまり、「金の価格が、二日間で、約230ドルも暴落した」という事実を見たことにより、「世界中の個人投資家が、一斉に、金や銀の現物を買い始めた」という状況のことである。別の言葉では、「ゴールドラッシュ」とも言える様相を呈し始めてきたのだが、このことは、「世界中の人々が、ようやく、現在の金融大戦争を認識し始めた」ということであり、具体的には、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間で、「過去10年ほどの期間、きわめて熾烈な戦いが起きていた」ということである。

このように、「国債を守る陣営」が考えてきたことは、「金価格の上昇」は「国債価格の暴落」に繋がる可能性があるということであり、そのために、「人為的に、金の価格を抑えてきた」とも推測されているのである。しかし、今回は、「世界中の個人投資家が、金を信用する陣営に参戦した」という状況でもあり、今後は、はっきりとした形で、「金融大戦争の終結」が見えてくるものと考えているが、実際に、最も呑気だった日本人までもが、急速に「金の現物」を買い始めたとも報道されているのである。