本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.5.7

金融市場における大政奉還

NHKの大河ドラマ「八重の桜」を興味深く拝見しているが、この時に感じさせられることは、「歴史の転換期においては、実に、劇的な変化が起きる」ということである。しかも、この時に、「その時代を生きる人々」にとっては、常に、意識面での「慣性の法則」が存在することも見て取れるのだが、具体的には、「今日は昨日の延長上にあり、また、明日も今日の延長上に存在する」というような考えのことであり、実際には、「既存の幕藩体制が崩壊することなどは有り得ない」という、一種の「思い込み」や「希望的観測」のことである。

しかし、歴史には、往々にして、「きわめて残酷な面」も存在し、実際に起きたことは、ご存じのとおりに、「約260年間」も続いた「幕藩体制」が、「ほぼ一夜にして崩壊した」ということだったのである。そして、この理由としては、「さまざまな矛盾が積み重なった結果として、既存のシステムや体制が維持できなくなった」ということだが、このような大変革は、「歴史上からは、頻繁に起きていること」とも言えるのである。

そして、現在では、「200年以上」も継続した「資本主義体制」に関して、大きな変革の時期を迎えようとしているのだが、現時点で、このことに気付いている人は、ほとんど皆無とも言えるようである。具体的には、「資本」という「お金」が、「主義」という「最も重要な価値」へと変化し、その結果として、現在では、「史上最大のマネー大膨張」が起きているのである。

しかも、今回は、日本一国だけの問題だった「明治維新」とは違い、「世界の金融システム」が崩壊を始めている状況でもあり、この最後の局面で起きていることが、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間での「せめぎ合い」とも言えるのである。つまり、「既存の体制を維持しようとする人々」と「新たな体制を構築しようとする人々」との間で「争い」が起きているのだが、この時の注目点が、「いつ、先進国の金利が上昇を始め、国債価格の暴落に繋がるのか?」ということである。

別の言葉では、資本主義社会の最終段階で発生した「信用本位制」が崩壊する条件としては、「国民が、政府や通貨に対する信頼感を喪失し、再び、貴金属や株式、あるいは、土地などの実物資産へ回帰する」ということが指摘できるのだが、今回の「世界的なゴールドラッシュ」が意味することは、間もなく、「金融システムにおける大政奉還」が起きるということでもあるようだ。