本間宗究(本間裕)のコラム
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2013.5.16
資産効果と換物運動
現在では、「世界的な株高」により、「資産効果」が起きることが予想されている。具体的には、「株価の上昇などにより利益を得た人々が、ブランド品や高級車などを買う状況」のことだが、実際には、「富裕層」と呼ばれる人々が、「奢侈品」などを購入する状況が、主に想定されているようだ。つまり、現在の「中国の富裕層」などは、30年ほど前とは様変わりの状態となっており、「1980年代の日本人」と同様に、短期間の内に「お金もち」になったために、「今まで手に入らなかった高級品を、大量に購入している」という状況になっていることが見て取れるのである。
また、日本人の場合には、「バブル崩壊」以降、「失われた20年」という言葉のとおりに、「株安」や「景気の低迷」に悩まされてきたために、今回の株高は、いわゆる「ペントアップ・デマンド(抑制されてきた需要)」を喚起する効果があったようだ。つまり、今まで抑え付けられていた「消費意欲」が、「株高の利益」などにより、一挙に噴出してきたものと思われるが、これからの問題点は、このような動きが、今後、「換物運動」へと変化する可能性だと考えている。
つまり、「富裕層が高級品を買う」という状態に留まっているならば、一般的な物価情勢には、あまり影響を与えないのだが、今後は、「一般庶民が、より高い値段で、必需品を慌てて購入する」という「換物運動」が始まることが想定されるのである。具体的には、すでに始まった「商品価格の上昇」に加えて、「更なる円安」や「国債価格の下落」が始まると、多くの人々が、「預金」や「現金」に対して「不安感」や「不信感」を抱くことが予想されるのである。
その結果として、「通貨に対する信頼感」が失われ、実際に、「自分の資金」が目減りを始めると、多くの人々が、急速に、実物資産へと「資金の移動」を始める状況が想定されるのである。つまり、「1980年代の中南米」や「1990年代の東欧」などで起きたことが、今後は、先進諸国で繰り広げられようとしているのだが、この時のポイントとなるのが、「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」へと、「いつ、移行を始めるのか?」ということである。
別の言葉では、「資産効果」をエンジョイしている状況が「ギャロッピング・インフレ」の段階とも言えるのだが、いったん、「換物運動」が始まった時には、「世界中の人々が大慌てをする状況」が考えられるからである。