本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.6.17

アベノミクスの落とし穴

先日、民放の「時事放談」という番組で、「藤井裕久元財務大臣」が、たいへん興味深い意見を述べていたが、それは、「アベノミクスの落とし穴」であり、具体的には、「インフレのリスク」のことだった。そして、現在のような状況下では、世界の資金は「国際商品」に流れていく可能性があるとも指摘していたのだが、このことは、たいへん「的を射た意見」であり、藤井氏の「見識の深さ」を垣間見たようにも感じた次第である。

このように、現在では、いろいろな識者が「アベノミクス」に対して、さまざまなコメントを述べ始めており、この過程で、多くの国民が「本当の金融危機」を認識し始めているようである。しかし、ほとんどの場合において、まだ「表面的な意見」が多いようにも思われ、結果として、「なぜ、現在の金融混乱が起きたのか?」、あるいは、「今後、どのような事が起きるのか?」が、ほとんど理解されていないようにも感じられるのである。

また、多くの人々は、「急増する日本の国家債務が、今後、どのようにして解決されるのか?」という点に対して、ますます、大きな不安を抱きつつあるようだが、この時に起きることが「資金の逃避」であり、実際には、藤井氏が指摘するように、「大量の資金が、国際商品に流れる」ということが、過去の歴史から見て取れるのである。ただし、藤井氏が想定している「国際商品」は、「原油」や「食料品」などのようだが、この点については、大きな異論が存在するものと考えている。

具体的には、今までの推移を考えると、これから「世界の資金」が集中するのは、「金」や「銀」などの「貴金属」、そして、「食料品」であり、「原油」については、「シェールガス」の存在により、「以前のような値上がりは避けられるのではないか?」とも考えられるからである。このように、これから想定されることは、本当の意味での「インフレ」であり、このことは、「世界中の人々が、現代の通貨に対する信頼感を失う」ということが、根本的な原因とも言えるのである。

そして、アベノミクスの問題点としては、「実体経済の成長」を考慮しながらも、「マネー経済」の根本である「通貨の信用」については、「先送りの姿勢」を取っていることが指摘できるようだ。つまり、現在では、「黒田日銀総裁」と協調して、「国家の借金を、一挙に棒引きにする政策」を画策しているようだが、この時の問題点が「金利上昇」であり、その時には、「経済成長」にとって必要不可欠な「資金」について、大きな問題が発生する可能性が存在するのである。