本間宗究(本間裕)のコラム
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2013.7.5
イタリア政府のデリバティブ
6月26日付の「英紙フィナンシャル・タイムズ」の報道によると、「イタリア政府が、1990年代後半に金融機関と結んだ国債取引などのデリバティブ(金融派生商品)契約に絡み、80億ユーロ(約1兆200億円)規模の損失が発生している恐れがある」とのことである。そして、この取引が発生した理由としては、「ユーロ加盟条件を満たすため、債務残高などを粉飾した可能性がある」とも報道されているのだが、このことは、今後、大きな波紋を広げる可能性があるようだ。
具体的には、「同紙が入手した資料によると、政府は外国金融機関との間で、想定元本ベースで317億ユーロ(約4兆260億円)のでリバティブ契約を締結した」とのことだが、このことが意味することは、「想定元本の約30%が毀損した可能性がある」ということだからである。そのために、現在、世界に存在する「約10京円のデリバティブ」についても、同様の状態になっている可能性が指摘され始めたのである。
つまり、「デリバティブ」については、「2009年」以降、ほとんど、実態が隠された状況となっており、実際には、「関係者でも、実情が分からない状況」とも言えるのである。そのために、「10京円の約3割が毀損している」という推測が正しいとすると、全体の損額は、「約3京円」という「天文学的な数字」となり、このことが、実際に表面化した時には、世界の「金融システム」や「通貨制度」は、大きな混乱状態に陥ることも予想されるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「かりに、このような事実が発表された時に、世界の金融界で、どのような事が起きるのか?」を、正確に理解することだと考えている。つまり、「誰が、このデリバティブを保有し、その損失は、どのようにして埋められるのか?」ということだが、今までの推移から言えることは、実際には、「欧米のメガバンク」が、「全体の9割程度」を保有しており、また、「損失」が出た時には、「世界の中央銀行が助ける」という状況が想定されるようである。
つまり、日本で、すでに始まった可能性がある「マネタイゼーション(国債などの現金化)」が「一挙に、世界的に行われる」ということである。そして、この時には、「預金神話」に縛られた「日本人」も、さすがに、自分の資産である「銀行預金」や「一万円札」などに不安感や疑問を抱き始めるものと思われるが、現在では、すでに手遅れの状態となっており、大量の預金の受け皿が無くなりつつある状態とも言えるのである。