本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.7.25

海中のビーチボール

2013年も後半に入っているが、今年の前半を振り返ると、「金(ゴールド)の市場」では、たいへん興味深い動きが起きたようだ。具体的には、「3月」までは、「ヨーロッパの個人投資家が、キプロス問題を見て、慌てて、金を買い始めた」という状況だったのだが、「4月から6月」に起きたことは、「国債を守る陣営」である「欧米のメガバンク」を中心にして、大量の「売り叩き」が行われたということである。そして、結果としては、「売り叩き」が、一時的に功を奏し、「多くの専門家までもが、金に対して弱気になる」という状況にもなったようだが、一方で、「金の需給関係」においては、歴史上からも稀に見るほどの「歪み」が発生している可能性が高まっているのである。

具体的には、今回の「売り叩き」が、「現物を保有していない投資家」が、「先物やデリバティブなどを利用することにより、純粋な空売りを行った」ということである。しかも、現在の「金の生産コスト」が「1300ドル前後」と推測されるために、すでに、「南アフリカでは、6割の鉱山会社が赤字操業の状態になっている」とも指摘されているのである。つまり、「金の供給」が減少する時に、「仮想空間の中で、きわめて大きな空売りが行われた」ということが、多くの専門家が考えていることである。

そのために、現在の状況は、「海中のビーチボール」ではないかと考えられているようだが、このことは、「空気が詰まったビーチボールを、無理矢理に、海中に押し込んだ状態」のことである。そして、これから想定されることは、「売り方が、一転して、買い方へ変化する」ということだが、このことは、「国債価格が暴落を始めると、これ以上、金の売り叩きをする必要性がなくなる」ということでもあるようだ。

このように、今後の「金の需給」を考えると、「自分の預金に危機感を抱き始めた世界中の個人投資家」に加え、「現在の通貨制度に不信感を抱いている世界各国の中央銀行」が、今後も、継続して「金」を買い続けることが想定される上に、今まで、「大量の売り叩き」を行っていた「欧米のメガバンク」が、今後は、一転して「買い方へ転じる」という状況が想定されるのである。

つまり、「海中のビーチボール」が、抑えていた手を放した途端に、「水面上へ、急速に飛び出すような状況」のことだが、この点については、実際に、「買い戻し」が起き、「半値戻りの水準」である「1550ドル前後」にまで価格が回復した時に、世界的に理解されることが考えられるようである。